【獣医師取材】動物と家族が幸せになれる獣医療を | 今井理衣先生
目次
動物と家族がずっと幸せでいるための手伝いがしたい
今井 理衣アーツ人形町動物病院 院長
<経歴>
2002年 麻布大学 卒業
2002年〜2016年 都内の診療施設にて勤務医
2006年〜2011年 麻布大学附属動物病院 腫瘍科専科研修医
2009年 日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医(1種)資格取得
2012年〜2016年 麻布大学獣医学部獣医学科獣医放射線学研究室研究生
2016年〜2021年 都内の診療施設にて腫瘍科外来を担当
2021年 アーツ人形町動物病院を開院
日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医資格を保有し、地域のホームドクターとしてだけではなく“がんのセカンドオピニオン”も対応している今井理衣先生。腫瘍への向き合い方、そして動物やご家族に対する想いについてお聞きしました。
動物のことをもっと知りたいと思っていた学生時代
ーーー 先生が獣医師を目指したきっかけを教えてください。
中学生の頃、通学路にあった動物病院に「里親募集」と子猫のポスターが貼ってあるのを見つけ、その子を新しい家族として引き取ることになったんです。
「ノンタン」と名付けたその子猫と暮らしていくうちに「獣医師になったらこの子のことをもっと知れるのかな」と漠然と考えるようになっていきました。
それと、この頃は海が好きだった父の影響で私も海の生き物に興味があったんですよ。
ノンタンのことに加え「獣医学部を目指せば自然科学について学べて、海の生き物だけではなく多くの動物を助けられる選択肢が増えるのではないか」とも考えるようになって、本気で獣医師を目指すようになりました。
ーーー 獣医学部に入学する前から後の就職先となる病院で実習に参加されていたそうですね。
はい。獣医学部に合格してすぐにノンタンとの出会いをくれたあの動物病院に電話をして、3月から実習に参加させていただくようになりました。
まだ入学前でしたので、この頃は動物に触ることはなく病院内の掃除などがメインでしたけどね。
獣医学部に入学してから、徐々に動物にも触らせてもらったり院内の勉強会に参加させてもらったりするようになりました。
大学1年生から6年生まで、平日は大学で海の動物をメインに研究・土曜日は動物病院で小動物の臨床の実習……と、今思い返しても忙しい毎日を送っていましたね。
ーーー 就職先にこの病院を選んだ理由は何ですか?
この動物病院を就職先に決めたのには、大切な家族であるノンタンのかかりつけ医だったという理由もありましたが、総院長や医療部長の先生の「人と動物との絆」の深い考え方に感銘を受けたことが大きな理由ですね。
私はこの2人の先生に「動物とご家族への接し方・勉強の仕方・それを活かしていく方法」など、獣医師としてどうあるべきかという全てのことを教わったように思っています。
腫瘍ができた動物に出来るだけ多くのことをしてあげたい
ーーー 今井先生が腫瘍を学ぼうと思ったきっかけは何ですか?
最近は犬猫の長寿命化が進んでいて、腫瘍を経験する老齢な動物も増えてきています。
腫瘍は命に関わる病気であると同時に、動物が老齢な場合は特に専門的な知識と経験が必要となります。
腫瘍が出来てしまった動物に最期まで根拠のある知識と技術を自信を持って提供したい。
そして、不安な気持ちを抱えているご家族にも寄り添って日々のケアを一緒に行ったり共に治療の選択をしたりなど「できるだけ多くのことをしてあげられる獣医師になりたい」と思い、腫瘍を学ぼうと思いました。
最初に勤務した動物病院では内科学の権威の下で学べたことも大きく、提供できる獣医療の幅を広げるために外科や腫瘍を学んでいきたいとも考えていましたね。
「最期までトータルで診たい」という想いから開院を決意
ーーー 「アーツ人形町動物病院」の開院の経緯を教えてください。
麻布大学で腫瘍の研修を終えてから5年間は都内の診療施設で腫瘍科外来を担当していました。
でも、認定医として腫瘍に向き合っていると日頃のケアや健康管理などの1次診療は地域のホームドクターに任せることになって、私たち専門家は関与できないんですよね。
そうした中で思い返すのは、愛猫のノンタンのかかりつけ医でもあった最初に勤務したあの動物病院でした。
段々と「自分の原点でもあるあの動物病院の先生方のように、一般の治療をしながら動物のことを最期までトータルで診てあげたい」という想いが強くなって開院を決めたんです。
腫瘍で死期を意識しなくてはいけない子こそ、普段の何気ないお手入れが嬉しい時もたくさんあります。
いつまでも「かわいいうちの子」でいてもらえるように、今でも変わらず「1次診療と2次診療、どちらかに偏らずに診療していきたい」と強く思っています。
ーーー 今井先生が院長として他の先生やスタッフに徹底している考え方などはありますか?
実際にスタッフに話しているのは「病院に来る子たちを自分の子だと思って接してほしい」ということですね。
動物病院に来院する時って、動物はもちろんご家族もとても不安になると思うんです。
でも、ご家族がリラックスできれば動物もリラックスしてくれることもあります。
なので、私たちは常にこの不安な気持ちを汲み取り、優しい声掛けをしたり院内や自分たちの身なりを清潔に整えてご家族に不快感を与えないように注意したり、“動物やご家族がリラックスできる環境づくり”を心がけています。
ただでさえ体調が悪く辛い気持ちでいる動物たちが、ご家族の不安な気持ちまで感じ取ってしまうことを少しでも減らしたいとは常に思っていますね。
家族に「動物と暮らして本当に良かった」と感じて欲しい
ーーー 今井先生が獣医師として嬉しかった瞬間はどんな時ですか?
動物病院は病気を治すだけではなく、動物の旅立ちを見送ることも多いです。
ですが、動物を見送ったご家族が次の子を迎えてまた病院に来てくれた時は嬉しいですね。
「次の子を迎え入れる」ということは「亡くなった子とのお別れに対して納得した」という表れだと思っているので、“家族をつないでくれた”という事実は本当に嬉しく思います。
ーーー 今井先生は「獣医師の役目」はどのようなことだと感じていますか?
私は、人にとって動物がなくてはならない存在だと理解するために臨床獣医師がいると考えています。
家族である動物との辛いお別れの後にも「動物と暮らして本当によかったな」と感じてもらいたいし、また前向きな気持ちで次の子を迎え入れて欲しいんです。
そのためにも、動物たちの終末期には治療の選択肢をご家族にお伝えし、一緒に考え、選び、ご家族も納得のいく老後を過ごさせてあげることが大切なのだと感じています。
動物や動物を介した向こう側のご家族が幸せでいられるように、私たちもお手伝いしていきたいですね。
ーーー これから来院される患者さんに一言お願いします。
腫瘍に起因する症状に困っている方や腫瘍の治療中で普段の生活について疑問を持っている方、動物を初めて迎えて暮らし方がわからないという方は早めに来ていただければと思っています。
また、必要に応じて腫瘍の認定医の見地から腫瘍の予防・早期発見についてもご案内が可能です。
動物病院は「病気の時」だけではなくて「健康な時」に様子を見せに来ることもとても大切ですから、身近なホームドクターとして、アーツ人形町動物病院にぜひ気軽にお立ち寄りくださいね。
今井理衣先生も登録している「アニぴたる」って?
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