【獣医師取材】どんな動物でも24時間救える病院を目指す|稲野辺悠先生
「救えない命を減らしたい」という強い思い
稲野辺 悠芝アニマルクリニック 院長
<経歴>
2017年 北里大学獣医学部獣医学科卒(人獣共通感染症学研究室)
2017年4月 ~ 2019年3月 千葉県の動物救急センター
2019年4月 ~ 2021年1月 横浜DVMs動物医療センター 非常勤獣医師
2019年4月 ~ 2020年4月 専門学校ビジョナリーアーツ 非常勤講師
2020年5月 ~ 2020年11月 東京ブレーメン動物専門学校 非常勤講師
2020年6月 ~ 2021年1月 永井動物病院 院長
2021年4月 〜 2023年7月 麻布ペットクリニック 院長
2023年10月 〜 現在 港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック 院長
東京都港区で、港区動物救急医療センター芝アニマルクリニック(以降、芝アニマルクリニック)の院長を務める稲野辺悠獣医師。24時間救命救急病院で数多くの動物を診療している稲野辺先生が、動物への向き合い方や病院の取り組みについてお話ししてくださいました。
獣医師になることを心に決めた幼少期
ーーー 獣医師を志したきっかけとはなんですか?
子供の頃から動物が好きで、小学生の頃にシマリスを飼いました。しかし、シマリスの飼育は難しく、病気にかかってしまったシマリスを診察できる動物病院が近くにありませんでした。弱っていくシマリスを見て「自分が治すことできたなら」と強く思いました。
それが、獣医師を目指した大きなきっかけです。
ーーー中学高校進学後も、獣医師になる夢は変わりませんでしたか?
当時の私は、獣医学部を目指すため学力を伸ばす努力が必要でした。挫けそうになるときもありましたよ(笑)。
しかし、病気に苦しむ動物達を助けたいという思いは変わらず、獣医師を目指し日々勉学に励みました。
ーーー大学入学後はどんな研究をしていましたか?
人獣共通感染症学研究室に所属していました。
いずれは臨床の場で動物を診療することを念頭に、獣医学会にも積極的に参加をしながら様々な研究に励みました。その過程で、「人を動物の感染症から守る」という獣医師として大きな役割に気づき、特に細胞培養の研究に力を入れて多くの知識を得ました。
動物救急センター病院での貴重な経験
ーーーなぜ最初の就職先に千葉動物救急センターを選んだのですか?
所属していた研究室の教授に、「最初の2年間で自身の方向性を決めておくと良い」という助言を頂き、若いうちに多くの臨床経験を積みたいと考えて千葉動物救急センターを選びました。
急患の受け入れも非常に多く、睡眠時間を削り治療にあたる日々を過ごしました。(笑)
千葉動物救急センターでは、先進医療の設備が整っており、犬猫や牛・豚・鳥など産業動物以外のエキゾチックアニマルも多く受け入れていました。そのため、エキゾチックアニマルの治療の知識を学ぶ大変貴重な機会でした。
ーーーその後は、専門学校の非常勤講師と永井動物病院の院長を兼務されていたんですよね?
そうですね。千葉動物救急センターでの経験をもとに、非常勤講師として主にエキゾチックアニマルに関する講座を担当していました。動物看護師やトレーナー、ペットショップで働く方など様々な業種の方が受講していました。
永井動物病院では、院長として責任を担う非常に貴重な機会をいただきました。この時期に開業も決まり、無事に独立開業の道へ進むことができました。
夜間診療で救える命
ーーー獣医師としてこれまでで一番嬉しかった瞬間どんな時ですか?
ある時、瀕死状態のフクロモモンガを連れた飼い主さんが来院しました。
フクロモモンガは、犬猫と比べると血管が細すぎて一般的に処置が難しいです。
私自身も治療法を調べ、骨髄から糖液を点滴する方法で救うことができました。従来の治療法では助からないことが多かったのですが、この方法は同じ症例のフクロモモンガにも効果が得られた適切な処置でした。
治療の甲斐あって、順調に回復し退院するのを見ることができ本当に嬉しかったです。
ーーー今後の獣医療の発展に何を寄与していきたいですか?
千葉動物救急センターで様々な動物の救急医療に携わった私としては、夜間診療のできる獣医師の育成に力を入れていきたいと思っています。現状、夜間診療を行っている獣医師は少ないです。
夜間は飼い主さんからの需要はあるのに、診療できる獣医師がおらず、救えない命があります。
一次診療で適切な診療を行うことはもちろんですが、それだけでは発見できなかった病気を夜間診療で早期発見し、その後の専門医による適切な診療によって救える命を増やしたいと思っています。
ーーー 稲野辺先生にとって“獣医師“とは?
獣医師とは、人間以外の動物を診る医者です。
獣医師は多種多様な何万種類もの生き物を診なければなりません。犬猫に限らず幅広い動物を診察できる専門家として日々勉強をしています。
いつでも相談できる“安心”を届けたい
ーーー芝アニマルクリニックで行っている独自の取り組みはありますか?
当院では、犬猫以外の動物も24時間受け入れています。
他にも、オンライン診療、LINE相談などSNSも活用しています。
オンライン相談は、日々全国から問い合わせが来ています。特に地方は、夜間の診療を行っている動物病院が少ないのが現状です。
動物は、繊細で体調が変わりやすいです。夜間に体調が悪くなったとき、気軽に相談することができる環境を整えたいと思いオンライン診療を始めました。
ーーー稲野辺先生、スタッフなどに周知し徹底している考え方や大切にしていることはありますか?
「出来るだけ多くの命を救う」という考え方はスタッフ共に常に意識しています。
スタッフには、具体的な目標を立ててもらい月次でミーティングを行っています。
現状に満足することなく、常に向上心を持って行動することは大切です。
常に学びの場であること、医療の現場で身につけた知識や技術を活かせる人材の教育に力を入れています。
ーーーこれから来院される方にメッセージをどうぞ!
当院は24時間救命救急病院です。
救急ではかかりつけ医と連携を取りながら、専門のスタッフが対応しますので、安心して来院してください。
遠方にお住まいの方は、オンライン診療も行っておりますのでいつでもご相談ください。
また、SNSを通じて予防医療や、普段から気をつけておくべきことなどの情報発信も行っていますよ。
稲野辺悠先生も登録している「アニぴたる」って?
アニぴたるは、専門性の高い獣医師が多数登録されているオンライン相談サービスです。ペットについての困りごとを相談すれば、信頼できる獣医師から的確な回答を貰えます。また、獣医師検索の機能も提供しており、困りごとにあった獣医師を見つけて連絡をとったり来院したり出来ます。