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【獣医師執筆】水を飲まないねこvs 飲んでほしい飼い主

皆さんのおうちの猫ちゃんはしっかりとお水を飲んでいますか?

うちの子はあまり飲んでくれないという飼い主さんが多いのではないでしょうか。
実は猫があまりお水を飲まない理由はその身体の特徴にあると言われています。
また、お水をあまり飲まないと泌尿器に負担をかけてしまい、病気につながることもあるので飼い主さんとしてはお水を飲んでほしいところです。

今回はそんな猫と飲み水の関係についてお話しします。

祖先から受け継いだ特徴

人間とともに暮らす現代の猫(イエネコ)の祖先は、リビアヤマネコと考えられています。
リビアヤマネコは水が少なく乾燥した砂漠やサバンナで暮らしていたので、あまり水を飲まなくても生活できる身体に発達しました。この特徴が現代のイエネコにも受け継がれているのであまり水を飲まないようです。

しかしその特徴が原因となり泌尿器系に負担がかかってしまい、猫はおしっこにまつわるトラブルが非常に多いです。
日々の生活からその負担を減らすために、できるだけきちんと水分を摂取してほしいものです。

おしっこの病気にご注意!

あまり水を飲まない猫ちゃんは泌尿器に負担がかかり“下部尿路疾患”になるリスクが高いことがわかっています。
下部尿路疾患とは、膀胱から尿道までの尿路に起こる様々な病気の総称で、尿石症や細菌感染により頻尿や血尿が症状として表れます。
動物病院に来る猫ちゃんの中には下部尿路疾患の子の割合が高く、猫がこの病気にかかりやすいことを物語っています。

尿石の出来やすさや感染に対する免疫機能など猫ちゃん自身の体質も関係してきますが、水を飲む量が少ないほど悪化因子となり発症しやすくなります。
反対にしっかりとお水を飲んでいる子では結晶や結石ができにくいので発症予防につながります。
一般的には体重1kgあたり40mlほどの水分を摂取できることが理想とされています。

おうちでできるお水の工夫

そんなあまり水を飲んでくれない猫ちゃんに一体どういった工夫をしてあげればいいのでしょうか?
簡単に実践できる5つのポイントをご紹介します。

・ウエットフードのススメ

ドライフードに比べてウエットフードは水分が含まれている量が多いので、ウエットフード中心の食事にすることによって簡単に水分量を増やすことができます。
気をつけるポイントとして、ウエットフードには栄養に偏りのある“おやつ”であるものが多いので選ぶ際には主食となる“総合栄養食”であるかどうかをしっかり確認しましょう。
フードの裏面にある記載を見れば簡単にわかるようになっています。

・ぬるま湯のススメ

飲み水として冷たい水よりも少し温かいぐらいの“ぬるま湯”を好む猫が多く、38℃前後の温度が最適と言われています。
特に冬場など気温が低く、置いておくだけでも水がすぐに冷たくなる時期ではさらに水を飲むことを避けるので下部尿路疾患のリスクが上がります。
普段の飲み水をぬるま湯にするだけでなく、こまめに交換してあげることでより飲んでくれるようになるかもしれません

・器のススメ

普段、水を入れているお皿が原因であまり水を飲んでくれないこともあります。
水を飲む時にお皿の縁にヒゲが触れてしまうことを嫌がる猫ちゃんは意外と多く、ヒゲが触れない大きいお皿に変えるだけで飲んでくれるようになることもあります。
また、老齢猫の場合は前に屈む体勢が難しいこともあり、お皿を台に載せるなどして高さをつけると深く屈まなくても負担が少なく飲むことができます。

・流れる水のススメ

おうちの猫ちゃんは水道の蛇口から流れる水は好きですか?
器に入った“動かない”水よりも、流水など“動いている”水に興味を惹かれよく飲んでくれるという猫ちゃんは多いです。
愛猫の好みを確かめるために今まで通りの器に追加して、モーターで水が循環するタイプの自動給水器を増やしてみるのもいいでしょう。

・設置場所のススメ

水入れを設置する場所を変えてみると飲むようになるということもあります。
ポイントとしては人通りが多く騒がしくて落ち着けない場所やトイレの近くなどは避けてあげましょう。
また、水入れは必ず猫の頭数よりも多く用意し、いろいろな場所に設置して猫が好きなタイミング、場所で飲めるようにすると良いでしょう。

飲み過ぎも問題あり?

うちの子はお皿が空になるぐらいよく水を飲んでくれるから大丈夫!

実はそれも危険なシグナルかもしれません。ここまでよく水は飲んでほしいとお話ししてきましたが、過剰に飲んでいる場合は病気が隠れている可能性もあります。

獣医学的には“多飲多尿”と言われ、文字通りたくさんお水を飲んでおしっこをする症状です。
この症状、病気が原因でおしっことして大量の水分を喪失してしまい、それに伴ってお水をたくさん飲むようになります。
代表的なものでは腎臓病、糖尿病などが挙げられ、特に高齢猫では慢性腎臓病が多くみられます。
10歳以上の高齢猫の30〜40%が罹患しているとも言われる慢性腎臓病、年齢とともにその罹患率も上がり高齢猫の死因のトップでもあります。

早期発見早期治療のためにも普段からどれくらい水を飲んでいるか把握しておきましょう。
お水を飲まなさすぎも心配ですが、飲み過ぎも要注意なので覚えておいてください。

どれぐらい水を飲めている?

どれぐらい水を飲んでいるかを確かめるには、1日のはじめと終わりでお皿の水の量を測ってその差を飲水量とするのが一般的です。
実際にどれくらいの水を飲めているかを正確に把握できるに越したことはありませんが、なかなか1日に何ml飲んでいると記録するのは至難の業です。
そういった場合ではおしっこの量に注目しましょう。
おしっこには飲んだ水の量がそのまま反映されるのでトイレシートの重さで飲水量を予測することが出来ます。

まとめ

ウエットフードばかり食べている猫では、食事からのある程度の水分が摂取できるので水を飲む量としては少なくなる傾向があります。
一方でドライフードしか食べていない猫があまり水を飲まない場合は要注意です。
このようにその猫ちゃんの生活によって適正な飲水量は変わってきますが、飲水量が極端に増えたり減ったりした場合、裏に病気が潜んでいる可能性があります。

腎臓への負担を少しでも軽減し、腎臓や下部尿路疾患のような泌尿器系の病気を予防するためにも、できるだけ愛猫が積極的に水を飲めるような工夫をしてあげましょう。
また、普段の生活から1日に飲んでいる飲水量を把握し、ここ最近いつもより減りが早い、全然減らないなどの異変が継続するようであれば動物病院で診察を受けましょう。