【獣医師執筆】げっ歯類をペットとして飼う前に知っておくこととは？
げっ歯類とはネズミの仲間です。では、どんなげっ歯類が多く飼育されているかをご存知でしょうか？ げっ歯類の中で人気のあるハムスターやモルモット、デグーなどの種類を飼う前に知っておくべき特徴について、エキゾチックアニマル専門医の霍野晋吉獣医師が紹介します。それぞれの種類の特徴を理解した上でペットに迎えることが大切です。
げっ歯類の特徴を知っておこう
げっ歯類にはたくさんの種類があります。まず最初に、げっ歯類がどんな動物なのかをみていきましょう。
げっ歯類は「地球上最も繁栄したグループ」
げっ歯類は、地球上の哺乳類(約4600種)の中でおよそ半数近くを占め、ほぼ全大陸の地域に生息している動物です。この理由は、げっ歯類が砂漠や熱帯雨林などの過酷な環境に合わせて進化する能力を備えているからだといわれています。
体の特徴については、それぞれが特異的に進化をし、モモンガのように空を滑空したり、ヤマアラシのように体の表面に棘を持ったりする種類もいます。また、げっ歯類は繁殖力が強く、子孫繁栄のためにすぐに子を産む能力を持っているため、全世界に広がっていったのでしょう。
げっ歯類は常生歯を持つかじり屋さん
げっ歯類は漢字で「齧歯類」と書きますが、文字通りにかじるための歯を持っているグループです。全てのげっ歯類は、上下1対で4本の前歯(切歯)が生えており、生涯を通して伸び続ける常生歯(じょうせいし)を持っています。
この常生歯は、物をかじることで歯が削れていき、長さ調節が行われます。げっ歯類が口をもごもごさせているのは、歯の先端を擦り合わせているからです。げっ歯目（ネズミ目）の学名Rodentiaもラテン語で「かじる」という意味のrodereからきています。
げっ歯類の多くは小さい体が特徴
げっ歯類の多くは体が小さい特徴を持つため、物陰などに身を隠しやすく、体の大きな捕食者に捕まりにくい動物だといわれています。例えば、げっ歯類最小種のカヤネズミは体重がたったの5~7gしかありません。しかし、カピバラなど一部のげっ歯類では、体重が40~50kgにもなる体の大きな種類もいますが、これはカピバラの祖先が南米にやってきた時代に天敵となる捕食者がいなかったために大型化してきたからだといわれています。
げっ歯類と人の関わりの歴史
げっ歯類の中でも、特にネズミは古来より人間とさまざまな形で深く関わり合ってきました。その歴史においてもネズミは人にとって有害なことが多く、例えば、ドブネズミという名称からも悪いイメージが優先されます。
また、げっ歯類が媒介者となって人間を死に至らしめる伝染病はいくつも存在します。例えば、中世にヨーロッパで猛威を振るったペストが有名ですが、他にもレプトスピラ、腎症候性出血熱、鼠咬症といった感染症が知られています。他にも、健康に害を及ぼすだけではなく、農作物を荒らしたり、人家の壁に穴を開けたり、電気のコードをかじるなど、人は昔からネズミに手を焼いてきました。
ペットとして人気のあるげっ歯類の種類
げっ歯類は悪いイメージばかりではなく、とても可愛いキャラクターとしても認識されている不思議な動物です。例えば、ミッキーマウスやハム太郎、トム＆ジェリーのジェリーのように、げっ歯類がモチーフとなったキャラクターはとても多く、子供たちに人気があります。ではここからは、ペットとして飼うことができるげっ歯類の中から人気の種類をご紹介していきます。
ハムスター
ハムスターは、ご存じの通り小動物において不動の人気を得ています。愛らしい表情に加えて、頬袋にいっぱい食べ物を詰め込む姿や両手でエサを一生懸命に持って食べる姿など、その仕草ひとつひとつの可愛らしさに心がキュンとなります。ハムスターは、比較的安値で購入できることもペットとしてハムスターを選ぶ人気の理由の一つとなっており、飼育方法も特別難しいものではないため、基本的な知識さえ知っていれば誰でも飼うことができます。
シマリス
シマリスは、小さな耳とくるっとした目にふさふさとした尻尾、背中に入った縞模様がとても印象的な動物で、この縞模様が名前の由来となっています。シマリスが木の実をほおばったり、木をするすると登っていく姿を見ると、とても心が癒されます。性格は野性味の強い特徴がありますが、ポイントを押さえればペットとして飼育することも可能です。シマリスで人気のキャラクターといえば、ディズニーのチップ&デールが有名ですね。
モルモット
モルモットは、大きな頭部を持ち足が短くぽてっとした体形をしていて、つぶらな瞳と小さな耳が特徴です。動物園のふれあいコーナーのマスコットとして子供たちに高い人気があります。 性格は比較的臆病で繊細なイメージもありますが、人なれをするととても人懐こい動物です。もともとは南アメリカにすむ野生のテンジクネズミが食肉用として家畜化されたことがモルモットの始まりです。ペット以外では実験動物でも使用されています。
チンチラ
野生のチンチラは、寒冷な標高3000～6000mのアンデス山脈の岩地で暮らしています。厳しい寒さから身を守るためにもふもふの毛を持ち、その触り心地の良さや美しい毛皮のために、人間に捕まえられて絶滅しかけた悲しい歴史がありますが、その後繁殖に成功しました。チンチラはおとなしいく人懐こい性格のためペットとして人気があります。チンチラの飼育の注意点としては、暑さに弱いので温度管理をしっかり行う必要があります。
デグー
デグーは「アンデスの歌うネズミ」といわれ、その名の通り歌うようにいくつかの鳴き声を使い分けて、仲間や親子でコミュニケーションをとるのが特徴です。強い社交性を持ち、小さな群れで生活をしています。また、デグーは人の2～3歳児の知能を持つとても賢い動物ともいわれます。学習能力もあるため訓練をすることで、道具を使ったり芸をするなど、人に懐きやすいペットとしてげっし類の中でも人気の種類です。先の広がった長い尻尾を持ち、別名トランペットテイルと呼ばれます。
ファンシーラット
ファンシーラットは、ドブネズミが研究のために実験動物に改良されたものですが、学習能力が高く賢いだけでなく、社交性が高く、人にもよく馴れることからペットとしても飼うことができます。通常、ラットは白い体に赤い目をしていますが、ペットとして飼われている中にはさまざまなカラーや模様があり、性格も温和なものが多くファンシーラットと呼ばれています。犬のような賢さと、猫のような人懐こさがある種類ともいわれます。
パンダマウス
野生のハツカネズミを改良して作り出されたマウスをさらに改良して作り出されたのが、白と黒のぶち模様を持つパンダマウスです。パンダマウスは、江戸時代にはペットとして日本で飼われていましたが、一度絶滅したため、海外に渡っていたマウスを逆輸入して復活させた歴史があります。大きさは7～12cm程度と通常のマウスよりも小柄でとても愛らしく、ハムスターほどの知名度はありませんが、ミッキーマウスのモデルになった種類です。
げっ歯類の飼育に役立つ情報を紹介
「げっ歯類のことをもっと勉強したい！」「ハムスターやモルモットを飼ってみたい！」「実際にどんなケージを用意してエサを与えたらよいの？」など、げっ歯類について知りたいことがある方におすすめなのが、Dr.ツルのエキゾチックアニマル情報室というウェブサイトです。ハムスター、シマリス、ラット/マウス、プレーリードッグ/ジリス、モルモット、チンチラ、デグーなどの生態や特徴、飼育、病気の情報が分かりやすく解説してあります。
ご興味のある方は是非チェックしてみてくださいね！げっ歯類について紹介しました。
＜校正・編集＞ アニてぃくる編集部・maki