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【獣医師執筆】狂犬病って実際どんな病気?狂犬病予防注射の重要性

わんちゃんを飼っているご家庭では、毎年3月下旬に「狂犬病予防注射の案内はがき」が届いているのではないでしょうか。
狂犬病予防注射が義務であることは知っていても、「なんでワクチンを打たなきゃいけないの?」「そもそも狂犬病ってどんな病気なの?」って思ったことはありませんか?

名前は良く聞くけれど身近に感じられにくい、そんな狂犬病についてお話ししていきます。

そもそも狂犬病って何?どんな病気?

狂犬病とは、狂犬病ウイルスによって引き起こされる感染症で、実は犬だけでなく人間を含めたすべての哺乳類に感染します。
ウイルスは感染動物の唾液に含まれるので、感染動物に噛まれたりウイルスの付着した爪で引っ掻かれたりすることで人間や他の動物に感染します。

感染から発症までの期間は一定ではなく、一般的には1〜2カ月と言われています。発症すると発熱、頭痛、倦怠感や悪心・嘔吐などから始まり、様々な神経症状が現れ、最終的には昏睡状態となり呼吸不全で死にいたります。
狂犬病は、感染しているか確認をする方法も発症後の有効な治療法も確立されていないため、一度発症してしまうと致死率はほぼ100%です。

世界の発生状況

世界保健機関(WHO)によると、世界では年間におおよそ5万5千人が狂犬病で亡くなっており、このうち3万人以上はアジア地域での死亡者と言われています。

日本国内では、人は1956年を最後に発症はなく、動物では1975年に猫で発症したのが最後。日本では感染が抑えられていますが、海外から来た方が日本で発症したり、海外で犬に噛まれた日本人が帰国してから発症するケースも過去に数例報告されています。
狂犬病は、日本、英国、オーストラリア、ニュージーランドなどの一部の国々を除いて全世界に分布しており、”海外ではほとんどの国で感染する可能性がある病気”と言えますね。

狂犬病の発生状況(PDF:78KB)

厚生労働省(2016)「狂犬病の発生状況」,
<https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/pdf/03.pdf>(参照2022-4-12)

日本は狂犬病清浄国!その背景は?

日本は世界に誇れる狂犬病清浄国です。
現在日本で発症がない理由は、大きく分けて以下の2つだと考えられています。
1つ目は、日本が島国であり、徹底した検疫を行っていること
2つ目は、狂犬病予防法に基づいた犬の登録・予防注射、及び野良犬対策

日本でも江戸時代中期以降、狂犬病の流行が繰り返しみられていました。
しかし、1950年に狂犬病予防法が成立し、飼い犬へのワクチン接種の義務づけ、野犬捕獲対策、その後の狂犬病予防員の献身的な努力のおかげで発生件数は減少していき、日本は世界に誇れる狂犬病清浄国となりました。

これらの人々の努力を無駄にしないため、世界で狂犬病が撲滅されるまで決して予防を怠ることはできません。

なぜ犬だけ狂犬病予防注射が義務付けられているの?

すべての哺乳類に感染するにも関わらず、なぜ犬だけ義務付けられているのでしょうか?
そこにはちゃんと理由があります。

それは、まん延の原因となる動物は限られており、アジア地域などの狂犬病の流行国では、犬が主なまん延源となっているからです。
狂犬病の予防注射を接種することで、犬同士でのまん延が予防され、人への被害を防ぐことができます。日本に万が一狂犬病が侵入した場合に備えて、犬への狂犬病予防注射を義務づけているのです。

世界中で狂犬病に感染する人の9割以上が犬から感染していることを見ても、犬の狂犬病のコントロールがいかに重要であるかが分かりますね。

犬を飼ったら登録と狂犬病予防注射を

狂犬病予防法に基づき、生後91日以上の犬を迎えた飼い主さんは、犬を迎えてから30日以内お住まいの市区町村に犬の登録、鑑札の交付を受けるとともに、狂犬病の予防注射を受けなければなりません。
またその後は1年に1回(予防注射接種時期は4〜6月)の接種が必要です。

お住まいの市区町村の動物病院や集合接種会場では、狂犬病予防接種の際に犬の登録、鑑札および注射済票の交付の手続きをしてくれるところが多いので、ぜひお近くの動物病院、集合接種会場に確認してみてくださいね。

もしかかりつけの病院が家から遠かったり、とても混んでいて長時間待つことが予想される場合、それ自体が愛犬に大きなストレスをかけてしまうかもしれません。
持病があり担当の先生でないと不安な場合を除いて、予防注射の時だけ最寄りの動物病院でお願いするなど、工夫してみても良いかもしれませんね。

予防注射の費用は地域や動物病院によってやや差がありますが、注射済票の交付手数料と合わせて3,500〜4000円ほどです。
自治体への犬の登録がまだの場合、登録手数料として3000円ほどかかります。

狂犬病予防注射が義務であることは分かったけど、ワクチンである以上心配なこともありますよね。
どんな時でも狂犬病予防注射を打たないといけないの?次はそんな疑問を解消していきます。

狂犬病予防注射はいかなるときでも打たないとだめ?

結論から言うと、以下のようなさまざまな理由で獣医師の判断により狂犬病予防注射が免除されることがあります。

・重篤な疾患にかかっていることが明らかである
・過去に狂犬病予防注射やその他のワクチンで副作用が出たことがある
・明らかに発熱している。極度に興奮している
・心臓、腎臓、肝臓、栄養障害などの基礎疾患を患っている
・妊娠中である
・発作持ちである

基本的には義務ですので、「単純に心配だから・高齢だから」といった理由では免除対象にはなりません。
そうは言ってもワクチンである以上、副反応は少なからず出てしまう可能性があります。
気になることや心配事がある場合、そのままにせず獣医師に相談してみてくださいね。

まとめ

いかがでしたか?
狂犬病は発症してしまうとほぼ必ず死亡してしまう恐ろしい病気ですが、日本においては1年に1回の犬のワクチン接種が義務づけられているおかげで狂犬病清浄国が維持されています。
犬を飼っている方は責任を持って自治体への登録と毎年の狂犬病予防注射を行いましょう!

愛犬の予防をしっかり行って、健康で楽しい日々を過ごしていきましょうね。