アニてぃくる

株式会社アニぴたるの公式ブログです

【獣医師取材】病気だけではなくその子自身を診られる獣医師に|中山舞先生

往診でペットも飼い主さんも楽でいられる時間を増やしたい

中山 舞いろどり往診動物病院 院長

<経歴>
  2011年  日本獣医生命科学大学 獣医学部獣医学科 卒業
  2011年~ 阿佐ヶ谷ペットクリニックに勤務
  2015年〜2019年 アニコム損害保険株式会社に所属・系列病院に勤務
  2021年  いろどり往診動物病院 開院
             

獣医師としての治療だけに留まらず、終末期を迎えたペットへの「緩和ケア」を重点的に行っている中山舞獣医師。往診というスタイルをとっている中山先生ならではのペットと飼い主さんへの想い、緩和ケアのお話を詳しくお聞きしました。

獣医師になる目標が「自然なこと」だった幼少期

ーーー 中山先生が獣医師を志すきっかけを教えてください。

祖父が埼玉で牛の獣医師として往診していて、小さい頃からよく仕事場に連れて行ってもらっていたんです。
父も獣医師ではありませんが生物の教員をしていたこともあって、身近に動物がいる環境はごく自然なものでした。

小さい頃から獣医師や往診についても何も違和感がなく、まるで生活の一部のように過ごしてきたんです。
なので、「将来は何になろうか」なんてことを考えるよりも前に「私は獣医師さんになる、以上!」みたいな感じでした(笑)。
高校の進路選択の時にも全く迷いがありませんでしたね。

ーーー 大学卒業後の進路はどのように決めたのですか?

初めは祖父のように大動物を診る獣医師を目指していたんですけど、大学の実習で牧草アレルギーがあることがわかって断念し、小動物の獣医師を目指すことに決めました。

20件くらい実習に行った中で私が最初の就職先に決めたのが、担当医制で「どんな病気でもその子は一人の獣医師が診る」というスタンスをとっていた「阿佐ヶ谷ペットクリニック」です。
ここならたくさん実践経験も積めるだろうし、複数の獣医師がひとりの子を診る病院よりも飼い主さんとのコミュニケーションも取りやすいのではないかと感じたのが決め手でしたね。

「世の中を見てみたい」と動物病院からペット保険会社へ転職

ーーー ペット保険会社に転職した経緯を教えてください。

「阿佐ヶ谷ペットクリニック」に勤めて4年した頃に結婚をして「今後は転勤などもあるかもしれないな」と考えるようになりました。
転勤の度に新しく勤める動物病院を探すのは大変なことですし、企業に所属した獣医師ならば各地に系列病院があるだろうから働きやすいのではないかと思ったんです。
それに加えて「もっと世の中を見てみたい」という想いもあり転職を決めました。

転職先のペット保険会社では、獣医師に直接LINEで相談できるサービスの立ち上げに携わっていました。
それが今の「往診」というスタイルを始める大きなきっかけにもなったので、ペット保険会社での経験は良い気づきの場にもなりましたね。

貴重な時間の中でもやりたいと思えることが「緩和ケア」だった

ーーー 中山先生が「いろどり往診動物病院」を開院したきっかけを教えてください。

ペット保険会社に4年勤務した頃に子どもが産まれて育休に入りました。
子どもがいると自分に使える時間が限られてしまうので、動物病院や会社に戻ったところで時短勤務が当たり前になって「自分の担当した子を最後まで責任を持って診ることができない」ということに、私自身がストレスを感じるだろうなと思ったんです。

「限られた貴重な時間で仕事をするなら、自分のやりたいことをやろう」と考えた時に私が心からやりたいと思ったのが臨床の頃から興味のあった「緩和ケア」でした。
「緩和ケア」は病を抱えながらも「その子がその子らしく過ごすこと」を支えて、ペットと家族がより良い毎日を送れるようにサポートする取り組みです。

それに往診ならば身軽に動くこともできるので、育児との両立もしやすいのではないかと思って「いろどり往診動物病院」を開院することに決めたんです。

ーーー ペットの緩和ケアは獣医療だけではなく、飼い主さんのカウンセラーのような立場でもありますよね?

はい。医療面でペットを支えるのがメインですが、飼い主さんの気持ちに寄り添うことも「緩和ケア」には重要ですね。

通常の動物病院だと、たくさんの患者さんが来院するのでひとりの子にかける時間は限られてしまうのが現状です。
そうすると飼い主さんが不安なことを口にしにくかったり、聞き取りが不足したり、飼い主さんの気持ちを汲み取ることができないのではないかという不安がありました。

特に終末期のペットの場合はほんの些細なことであっても、動物が亡くなってしまったあとに飼い主さんに大きな「後悔」を残してしまうことにもつながりますからね。
それを避けるためにも、緩和ケアはとても大切なことのように感じます。

ーーー 往診や緩和ケアを行う中で、中山先生が意識しているポイントを教えてください。

いくつかあるのですが、一番は「できるだけ他にもかかりつけ医を持ってもらうこと」ですね。
「かかりつけ医はひとつだけ」という方が多いかもしれませんが、私は複数の獣医師の意見を聞くことが大切だと思っているんですよ。

同じように勉強してきた獣医師でも、経験値や考え方によって言うことも変わってきますからね。
飼い主さんには迷った時には一つの意見にとらわれてしまうのではなく、さまざまな話を聞いてみてご家族の答えを出してほしいなと思っています。

「今日の症状はこうで、診察ではこれをしました」と、こちらからかかりつけ医へ連絡し、連携して治療を行えるようにもしますので、安心してかかりつけ医と往診とを併用していただきたいです。
通常の動物病院と往診とでは、できること・得意なことが違います。ですから、うまく使い分けてほしいなと思います。

緩和ケアや在宅医療を身近なものにしたい

ーーー 今後の獣医療の発展に中山先生が寄与していきたいと思うことはありますか?

どんなに獣医療が発展しても「治せない病気」はこれからもずっとあるものだと思うんです。
最期まで付き合わないといけない病気と向き合った時に、ペットに負担の少ない状況をつくってあげたり、飼い主さんに楽な気持ちを持ってもらったり、「当たり前の選択肢」として緩和ケアや在宅医療を行える形をつくっていけたらと考えています。

それに、往診のスタイルは患者さん側だけではなく、こちらとしても時間のコントロールがしやすいので一般的な動物病院よりも働きやすいです。
なので、ペットの在宅医療が身近になることは、女性獣医師が結婚や出産を機に辞めてしまうことも減らせるのではないかなと感じるんです。
女性獣医師が好きな仕事を続ける選択肢のひとつになってくれれば嬉しいですね。

ーーー 中山先生はどのような「獣医師」でありたいとお考えですか?

私は「病気」だけではなく「その子自身と家族」を診られる獣医師でありたいと思っています。

同じ病気であっても「最善」の治療やケアの選択肢は、その子やご家族ごとに違います
その子の状況ごとに、治療やケアを飼い主さんが選べるように、私もお手伝いしたいと考えています。

ーーー これから「いろどり往診動物病院」を利用される患者さんに一言お願いします。

これから付き合っていかなければならない病気があって暗い気持ちになっている飼い主さんや、かかりつけ医に相談しづらいことがある、他の意見を聞いてみたいと思っている、病院嫌いな子など通院に困り事があるという飼い主さんには気軽にお問い合わせしていただきたいです。
きっと力になれると思いますよ。

中山舞先生も登録している「アニぴたる」って?

アニぴたるは、専門性の高い獣医師が多数登録されているオンライン相談サービスです。ペットについての困りごとを相談すれば、信頼できる獣医師から的確な回答を貰えます。また、獣医師検索の機能も提供しており、困りごとにあった獣医師を見つけて連絡をとったり来院したり出来ます。