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【獣医師取材】東洋医学で歩行不能の犬を助けられた|増田国充先生

「獣医師のスキルで社会にあらゆる還元をしたい」

「獣医師のスキルで社会にあらゆる還元をしたい」

増田 国充ますだ動物クリニック 院長

<経歴>
 1976年      静岡県島田市生まれ
 2001年      北里大学獣医学部獣医学科卒業 獣医師免許取得
 2001年~2004年  原獣医科病院(名古屋市千種区)勤務
 2004年~2007年  とりい動物クリニック(静岡県富士市)勤務
 2007年      ますだ動物クリニック 開院
 2011年      東日本大震災における被災動物レスキュー活動等参加
 2014年~     専門学校ルネサンス・ペット・アカデミー非常勤講師
 2015年~     日本ペットマッサージ協会とペット薬膳国際協会の講師
 JTCVM 国際中獣医学院日本校 事務局長              

故郷の静岡県島田市でますだ動物クリニックを経営する増田 国充(くにみつ)獣医師。東洋医学・エキゾチックアニマルを扱うだけでなく、動物看護師の教育や動物のための防災など幅広い分野で活躍する増田先生が、これまでの経験を語ってくれました。

獣医師が活躍できる範囲の広さを知り、目指そうと思った

ーーー まず、なぜ獣医師を志したんですか?

子供の頃からペットを飼っていて動物が好きだっとか、そういうことでは全く無くて(笑)、高校生のときに生命科学に興味を持ったのがきっかけです。その上で、獣医師は犬猫や牛馬などを診療するだけでなく、食肉の安全性管理や公衆衛生など活躍できる領域がたくさんあることを知って、獣医師になってみたいと思いました。

研究室で出会った恩師の影響で、うさぎやハムスターを診るようになった

研究室で出会った恩師の影響で、うさぎやハムスターを診るようになった
院内で飼育されているロップイヤーのみぞれちゃん

ーーー クリニックでは小動物を扱っていますが、きっかけを教えて下さい

学生時代に入った研究室で、小動物の臨床も扱っている恩師に出会ったのがきっかけです。研究室では循環器系(心臓や血液など)の疾病の治療も扱っていて、“この臨床治療って面白いじゃないか!”と思って小動物臨床の世界に飛び込むことにしたんです。

今ではクリニックで診ている動物の1割はうさぎで、これは他の動物病院に比べてもかなり多いほうだと思います。ハムスターを連れてくる飼い主さんもおられます。犬猫以外でも、哺乳類なら診療可能です!

自分の皮膚炎が漢方で治ったことをきっかけに、東洋医学を操る獣医師へ

自分の皮膚炎が漢方で治ったことをきっかけに、東洋医学を操る獣医師へ

ーーー 東洋医学も使って診療しているとのことですが、きっかけを教えて下さい

確か獣医師国家試験を受ける学生の頃だったと思うんですが、日焼けをしすぎて皮膚炎になり、すごくヒリヒリして痛かったんですね。そのときに近くの皮膚科の先生に漢方を処方されました。ステロイド系の塗り薬とかを処方されると思っていたので、正直 ”なんじゃいこれ!”って思いました(笑)しかしこれが凄く効いたんです。”すごい!漢方って面白い!”って思いまして、いつか獣医療に東洋医学を活かせたらいいなと頭の片隅で思ったのを覚えています。

そこから時が経ち、原獣医科病院(愛知県名古屋市)で働いていた頃、心臓疾患や外科手術を得意とする院長先生が、腰が痛くなっている犬に鍼を打っているのをみたんですね。鍼治療は西洋医学の手術とは対極にあるような治療なので結構ビックリしました。

その院長のすすめで東洋医学を本格的に勉強して鍼や漢方の効力を知り、開業するときには東洋医学を取り入れた病院にしようと決めました。今では鍼治療だけで月に100件程度は扱っています。

立てないワンちゃんを東洋医学で歩けるようにした経験

立てないワンちゃんを東洋医学で歩けるようにした経験

ーーー 獣医師としてこれまでで一番印象的な体験を教えて下さい

歩けなくなってしまった1才位のダックスフンドを、車で1時間以上かけて連れてきてくれた飼い主さんがいたんですね。症状は重かったんですが、かかりつけの外科の先生に外科的治療を諦められてしまったとかで、東洋医学を求めて私の病院に来てくれました。

しかし困ったことに、手を尽くしてもなかなか立てるようにすらならなくて、遠方から来てくれているのに期待に応えられなくて結構焦ったのを覚えています。

そんなとき、東洋医学の学会で随分前に公演されていた石野孝先生(※)を思い出して、相談しに行くことにしたんです。そうしたら、解決策を教えてくれたり、飼い主さんの前で焦ってる姿を見せてはいけないよと、心構えまで教えて頂けました。そのアドバイス通りに治療を行った結果、ワンちゃんの容態は物凄く良くなって最終的には歩けるようになったんです!

“石野先生すごいな!”っていうのもあるんですが、この経験が本当に糧と自信になって、同じような症状の子に出会っても、”これくらいの症状だったら自分で治せた実績があるわけだから大丈夫。治せる”と思うようになりました。自信を持って飼い主さんと接する事が出来るようになったこともあり、最終的に治療成績が上がったんだと思います。

※ 石野孝先生・・・獣医療における東洋医学のレジェンド。’21/6 現在、国際中獣医学院日本校校長、かまくらげんき動物病院(神奈川県)院長。

動物看護師の教育や災害時の動物への防災にも精力的に活動中

動物看護師の教育や災害時の動物への防災にも精力的に活動中

ーーー 増田先生が動物病院以外で取り組んでいることがあれば教えて下さい

結構色んなことに手を出すのが好きで、今は2つあります。

1つ目は、動物看護師を教育する講師です。2023年に今の動物看護師は「愛玩動物看護師」という国家資格化して、これまでより活躍の場が広がります。そうなったときに、国家資格を持っていると胸を張れるだけの技術・技能・知識を臨床の現場で発揮できないといけません。私は講師として臨床現場で感じたことを教えたり、Twitterの投票機能を使って問題と解説を投稿したりしています。

2つ目は、防災への取り組みです。東日本大震災のとき、ワンちゃん猫ちゃんが飼い主さんと離れ離れになってしまうことが起きました。牛や豚などの畜産動物とかも取り残されてたくさん犠牲になってしまったんですね。本当にもどかしい思いをしました。

動物は社会の1つのピースになっているわけですから、いざ非日常になったときに、動物のために地域の皆さんや獣医師の我々がどういった対応をすればよいのかという計画を考えておく必要があります。災害動物医療研究会という団体にも入っていますが、今度は防災士の資格にもチャレンジする予定で、災害時に可哀想なペットを出来るだけ出さないための準備に力を注いでいきます。

獣医師として出来る社会還元を

獣医師として出来る社会還元を

ーーー 増田先生にとって”獣医師”とは?

獣医師として、臨床をしていく中で学んだことや学会などで得た知識を、広い視野をもって世の中に還元し続ける存在でありたいです。”いいな!”って思ったことにはいい意味で首を突っ込んでみると、そこで拡がる新しい人脈や初めて出会う活動があったりするので、それが面白くてライフワーク的に新しい分野に手を出しています。

東洋医学の効力を多くの飼い主さん、獣医師に伝えていきたい

東洋医学の効力を多くの飼い主さん、獣医師に伝えていきたい

ーーー 増田先生がペットの飼い主さんにお伝えしたいことはありますか?

東洋医学、特に漢方は”効かないよね”っていう思い込みが植え付けられている飼い主さんが多くいらっしゃいます。でも本当は、使い方によっては漢方も即効性を発揮するんです。

しかも、西洋医学であれこれやって結果が出ていない状態で東洋医学の我々のところにいらっしゃる方も多くて、東洋医学はすでに分が悪い状態からスタートになるんですよ。
最初から東洋医学でアプローチ出来ていたらもっと勝率いいのになって思うこともあります。

また、東洋医学のいいところは、すでに元気な子をできるだけ長く元気で居続けさせるのにも役に立つところです。「最近は調子良くて悪いところないんだけど、ちょっと鍼やってよ」なんていうお客さんも実際にいらっしゃいます。

東洋医学の症例や治療成績を学会に出していたりもするので、できるだけ多くの獣医師さんに振り向いてもらって、東洋医学のチカラに獣医師・ペットの飼い主さんの双方に興味を持ってほしいと切に願うばかりです。

ーーー 最後に、これからますだ動物クリニックにいらっしゃるお客様に一言お願い致します。

当院では鍼灸をはじめとした東洋医療を実施しています。なかなかなじみのない診療科目ですので、最初は疑心暗鬼で治療を受けられる方が多いのですが、効果を最大限に発揮して期待に応えられるよう努めています。
また、中医学(東洋医療)西洋医療の良いところを生かした中西結合医療(ちゅうせいけつごういりょう)により慢性疾患や、既存の医療で対応が難しいケースに挑んでおります。獣医療に新たな選択肢を、古くて新しい獣医東洋医療にご期待ください。

増田国充先生も登録している「アニぴたる」って?

アニぴたるは、専門性の高い獣医師が多数登録されているオンライン相談サービスです。ペットについての困りごとを相談すれば、信頼できる獣医師から的確な回答を貰えます。また、獣医師検索の機能も提供しており、困りごとにあった獣医師を見つけて連絡をとったり来院したり出来ます。