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【獣医師取材】エキゾチックアニマルにも中西結合医療を|緑川久美先生

エキゾチックアニマルにも中西結合医療を浸透させる

緑川 久美うめやしきアニマルクリニック 院長

<経歴>
2002年 北里大学獣医畜産学部 卒業
2002年〜2003年 地元徳島県の動物病院に勤務
2009年~2012年 横浜市旭区の動物病院に勤務
2012年~2015年 町田市の動物病院に勤務 のづた動物病院 院長代理
2015年~2019年 川崎市のわたりだ動物病院 4年間
2019年~2021年 東京都文京区のER動物救急センター 文京分院
2021年 6月30日 うめやしきアニマルクリニック 開院
             

東京都大田区で、うめやしきアニマルクリニックの院長を務める緑川久美獣医師。 エキゾチックアニマルへ中西結合医療を積極的に行っている緑川先生が、動物への向き合い方や病院の取り組みについて伺いました。

猫と共に過ごした子ども時代

ーーー はじめに、緑川先生が獣医師を目指されたきっかけを教えてください。

子どもの頃、家の周りにたくさんの野良猫が住んでいる環境で育ち、自宅でもペットを飼っていました。ただ、飼っていたペットを地元の動物病院に連れていった時に誤診されたことがあって…当時、近所に他の動物病院がなかったためセカンドオピニオンを頼めず、悲しい思いをした経験があります。

その出来事がきっかけで、獣医師を目指したいと思うようになりました。

ーーー 子どもの頃から一貫して獣医師を目指されていたんですね。

いえ、実は高校3年生の時に数学の学者になりたいという夢も持っていたのですが…やはり病気に苦しむ動物を助けたいという幼少期の夢が忘れられず、両親に相談し進路変更。1年間の浪人期間を経て、北里大学獣医畜産学部(現:獣医学部)に入学しました。

同級生よりも進路を決めるのが遅かったのでとても苦労しましたが、あの時思い切って進路変更してよかったなと思っています。

ーーー 大学入学後はどのような研究に励まれましたか?

放射線科の研究室に所属していました。

放射線科では、レントゲン・CT・MRI・エコーなど、体に傷をつけずに体内の状態をビジュアルで表現する診断方法について学びました。画像診断は体内の状態を診断するのに非常に重要なので、大学時代の研究は勉強になりましたし、現在も診療する際にこの経験が活きていると感じています。

エキゾチックアニマルの治療を始めたきっかけ

ーーー 大学卒業後は、獣医師としてどのような経験を積みましたか?

大学卒業後は、子供の頃から馴染みのある地元徳島県の動物病院で働きました。

約1年という短い期間でしたが、獣医師として未熟だった私に動物との接し方や、飼い主さんへのヒアリングの仕方など、大切なことを学ばせてもらいましたね。

その後、兵藤どうぶつ病院に勤務。外科治療の経験が豊富な先生の元で、さまざまな治療法を学び、スキルを身につける貴重な経験ができたと感じています。また、夜間救急も経験して緊急性の高い手術にも携わったのもこの頃です。

後に勤めたのづた動物病院では、たぬきや野鳥などの野生動物の保護やワクチン補給に注力していて。のづた動物病院での勤務がきっかけで、エキゾチックアニマルの治療を本格的に学び始めました。

ーーー 緑川先生は、東洋医学と西洋医学それぞれの要素を取り入れた「中西結合医療(ちゅうせいけつごういりょう)」の診療も行っていますよね。取り入れ始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

わたりだ動物病院に勤めていた頃、鍼灸師の先生がヘルニアのダックスフンドに鍼を打っているのを目にしたことがきっかけです。

実際に施術をすると体の不調がとれ、楽そうにしているダックスフンドを見て感動して。その後、中西統合獣医療を本格的に学ぶため国際中獣医学院に入学しました。

西洋医学と東洋医学である鍼灸や漢方を併用した中西結合獣医学を勉強した後、犬猫に限らず、うさぎを含むエキゾチックアニマルへの治療に加えるようになりました。

飼い主さんとのヒアリング大切に

ーーー国際中獣医学院を卒業後、エキゾチックアニマルの診察をはじめて大変だった経験はありますか?

犬猫の場合は触診して、検査を重ねて治療する流れが一般的です。対して、エキゾチックアニマルの場合は、来院した時点で病気がかなり進行している子が多いので、見極めが大変だと感じました。

また、エキゾチックアニマルの場合は長時間に渡って診察をすると体に負担がかかります。長々と体を触ったりすることで具合が悪くなってしまうこともあるので、適切な治療方法を判断する難しさを痛感しましたね。

特に、鳥は1分以内に治療を終わらせなければ最悪死に至るケースもあります。

けれども飼い主さんからすると「短時間で治療が終わったけれど、本当に大丈夫?」と感じる方もいるので、ヒアリングと治療内容の説明、また鳥の診察時の特徴を理解していただくことが非常に重要です。

あらためて飼い主さんと密にヒアリングしたうえで、あらゆる可能性を考え、的確な治療を行うことの難しさを身を持って体感しました。

ーーー エキゾチックアニマルは犬や猫の診察とは違う難しさがあるんですね。また、さまざまな病院で獣医師として活躍されてきた緑川先生が、これまでで一番嬉しかった瞬間はどんなときですか?

骨髄線維症を患って他院で余命6カ月と言われた犬が、鍼治療を行ったことで余命より長く生きられたことですね。

その子の飼い主さんは薬剤師をしており、漢方にも詳しく治療に対しても熱心で前向きな方で。当時は、鍼治療を初めて間もなかったのですが、飼い主さんからの要望もあり鍼治療を実施。

飼い主さんと密にコミュニケーションを取りながら、最善の治療ができるよう私自身も勉強に励みました。治療の結果、9ヶ月ほど元気に長生きすることができ、本当に嬉しかったです。

ーーーこれまでの経験を踏まえ、獣医師として意識していることはなんですか?

実は、現在当院に来院される方は、セカンドオピニオンで受診される方が多いんです。

「他院でこのような治療をしているけれど治らなくて…」と。長い治療の繰り返しの中で飼い主様の中で迷いや不満がたまっていることが多々あります。そういった気持ちを取り除くためにあらためて私たちが一からしっかりお話を聞いたうえ で、動物にとってベストな治療法を飼い主さんに提示するよう心掛けています。

またペットは私たち人間の生活に寄り添って、常にパートナーでいてくれる存在でもありますよね。そのため私自身が獣医師として、飼い主さんとペットの架け橋になるべく、お手伝いできる存在でありたいと思っています。

ーーー 緑川先生の今後の目標を教えてください。

犬猫はもちろんですが、エキゾチックアニマルの治療にも中西結合獣医療を浸透させていきたいです。

実際に、私自身も病院でうさぎに鍼を打つ治療や漢方を使用した治療などを実践的に行っています。エキゾチックアニ マルは痛みやストレスに敏感なので、体を労わるという意味で中医学を用いた治療は有効です。今後は、エキゾチックアニマルの治療法の幅を広げていきたいですね。

動物にとってベストな治療法を

ーーー 緑川先生が、ともに働くスタッフに周知し徹底している考え方や大切にしていることはありますか?

私たちは、飼い主さんとペットが受付に来たときから診察は始まっていると考えています。だからこそ、直ちに病状を把握できていなくても、どういった治療を望んでいるのか、飼い主さんがペットに対してどれだけ思い入れがあり、治療と向き合っていく心の余裕があるのか、などをスタッフ共に常に考えるようにしていますね。

また病気を治すことが最優先ではありますが、飼い主さんの悩みに寄り添うことで気持ちを軽くしてあげられるような、適切なアドバイスを心がけています。

ーーー これから来院されるお客様にメッセージをどうぞ!

近くの病院に通院していても、獣医師と上手くコミュニケーションがとれずに困っている方が多くいらっしゃいます。

セカンドオピニオンでは、かかりつけ医がどのような想いで治療をしていたのかという観点も含めて、飼い主さんの悩みも汲み取って最善の治療方法を見つけていきます。他院に通院していて疑問に思ったことも、お気軽にご相談くださいね。

緑川久美先生も登録している「アニぴたる」って?

アニぴたるは、専門性の高い獣医師が多数登録されているオンライン相談サービスです。ペットについての困りごとを相談すれば、信頼できる獣医師から的確な回答を貰えます。また、獣医師検索の機能も提供しており、困りごとにあった獣医師を見つけて連絡をとったり来院したり出来ます。