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【獣医師取材】医療だけでなく飼い主に伝える力を大切に|宮直人先生

地域密着型の動物医療サポートを目指して

宮 直人奥沢すばる動物病院 院長

<経歴>
  2009年 日本獣医生命科学大学卒業
  2009〜13年 西荻動物病院勤務 副院長
  2014〜16年 TRVA 夜間救急動物医療センター勤務
  2016〜17年 関東近郊の複数の病院で非常勤獣医師として勤務
  2017年〜現在 奥沢すばる動物病院 院長
             

東京都世田谷区奥沢で「奥沢すばる動物病院」の院長を務める宮直人医師。ペットだけではなく飼い主へのコミュニケーションも大切にしている宮直人先生が、動物や飼い主への向き合い方などについてお話してくださいました。

昔飼っていたペットの死産の経験から獣医師が選択肢に

ーーー 宮先生が獣医師を目指したきっかけを教えてください。

うちの親はサラリーマンで、祖父は学校の先生なんですよね。なので、将来の進路として小中学校の先生は自然と考えていまして、子どもの頃から獣医になりたいとは思っていませんでした。

でも、気づいたら進学や就職の選択肢に「獣医師」があがるようになっていたんです。

と言うのも、昔飼っていた犬の自宅出産がうまくいかずに死産となってしまったことがあったんです。母犬の体は大丈夫だったのですが、胎児が亡くなった状態で産まれてきてしまって……。

「ペットの犬の死産に対して、家族としてできることがなかった」その虚しさが子ども心にショックを受けたというのは、きっかけとしてありますね。

ーーー 大学卒業後はどのようにスキルアップされたのですか?

私が卒業後にまず勤務したのは、地元にある「西荻窪動物病院」でした。仲の良かった研究室の先輩が勤務していて、私が就活するタイミングで「夏休みの間にバイトに来ないか?」と誘われたんです。そうしてアルバイトに行っていた流れで自分も就職した感じですね。  

大学で臨床をやってきて慣れていると言っても、現場の臨床とは若干違いましたし勝手の違いなんかもたくさんありました。でも、その大学と現場とのギャップがいい経験になるかなと思って、先輩たちの補助以外でもあらゆる症例や治療をずっと観察して現場でのやり方を吸収するようにしていました。

その後、「上石神井動物病院」に移って4年目の時から副院長として勤務するようになりました。

「救命救急医」から「街の獣医さん」になるまで

ーーー 先生はその後、救命救急の現場でも活躍されていましたよね。

「西荻窪動物病院」と「上石神井動物病院」では、週1回夜勤があったんです。

重い症例だと夜間にいる最低限の人数対応ではできないことがたくさんあって、「やれそうなのにやれない」とか「人数がいたらもっとちゃんとしたことがやれたのにな」ということが何度もありましたそれでいて、救急で来るのって一般的な動物病院が開く朝の時間帯まで放置できないような、緊急性の高い症例が多いんです。

救急医療の現場でもっと幅広い経験を積みたいと思っていたのですが、当時は救急病院ってそんなに数があるわけではなかったんですよね。都内にある救急病院でこれから規模が大きくなりそうな「TRVA夜間救急動物医療センター」が次に勤務する病院の候補になりました。

後々気が付いたんですが「TRVA」の中村篤史先生、実は自分が学生の時に実習に行った先でお世話になったことがあったんです。その時は中村先生もまだ1年目や2年目の先生だったのですが、とても面倒見よく実習生の相手をしてくれた思い出があります。TRVA入社面接の時に「この人の下で働いたら、きっと幅広い獣医療を共に学べて、どんどん救急医療が発展していくだろうな」と思ったのを覚えています。なので、中村先生と一緒に働きたいという想いが強かったですね。

実際に救命救急の現場に入ってからは印象的なエピソードがたくさんあって、一般の臨床の現場では数年に1回レベルの症例が高い頻度でありました。例えば、普通の病院では滅多に見ないような60キロサイズの犬をすぐに手術をしなければならないこともありましたしね。

ーーー 救命救急医の頃から自身で動物病院を開業することは決めていたのですか?

2016年に非常勤として複数の病院で働いていた頃から開業は見据えていましたね。

当時は古巣の西荻窪動物病院だけではなく千葉や神奈川の複数の動物病院でもアルバイトをして、資金を貯めながら開業のためのテナント探しもしていて忙しかったです。

その頃に住んでいた自宅から千葉のアルバイト先までは車で1時間半もかかり通勤するのは結構大変でしたが、地域が変わると頻出する疾患も変わるので興味深かったです。例えば、東京湾アクアラインを渡って千葉県に入るだけでも「フィラリアの患者数が増えたな」と感じることがありましたし、来院される犬種の数が都内と比較して多かったり、ペットの飼育方法もエリアによって少しずつ違うんですよ。獣医師としてそれらに柔軟に対応する必要があり、良い経験になりました。

ーーー 救命救急や非常勤などを経て、街の動物病院である「奥沢すばる動物病院」が誕生したのですね。

病院の土地を探している時に、妻の地元である奥沢も候補として探していたんですよ。その探しているタイミングでちょうど良いテナント見つけたんです。

地域名に何かをプラスさせた名前がいいなと思っていて、妻と一緒にいろいろと考えていました。そうしたら何となくですが「すばる」という単語がいいかなという話になったので、「奥沢すばる動物病院」という名前に決定して2017年6月に開院しました。

ーーー 先生の「動物と暮らす方達の〝羅針盤〟のような存在になる」という理念がとても印象的でしたが、それについてお聞かせいただけますか?

はい。当院では飼い主さんとのコミュニケーションを最も大切としていて、「飼い主さんが何を求めてきているか」を気にするように心掛けています。来院された本当のニーズを汲み取って本来の目的をヒアリングし今後の治療方針を提案できるように、患者さまによって聴く内容を変えるなどの工夫もしています。

また、私は患者さまのペットを治療する際には「自分は異常やその原因を見逃しているかもしれない」と思うようにしているんです。常に病気を見逃している可能性を考えながら注意深く観察し、あらゆる選択肢で治療を行なっています。それでも、時には自分の力だけでは解決できないこともあるんです。そうして手詰まってしまった時には抱え込んでしまうのではなく、設備や獣医師の数が整った他の動物病院への紹介を積極的に行っています。

「飼い主に分かりやすく伝える能力」も身につけた“プロフェッショナル”に

ーーー 獣医として嬉しかった瞬間はどんな時ですか?

獣医を目指すきっかけともなった産科を今の獣医療の強みにしているのもありますが、赤ちゃんが無事に生まれるとご家族も嬉しそうにしてくれますし、取り上げた時の産声を聞くと安心します。産科で赤ちゃんを取り上げる瞬間は、常に嬉しいと思う瞬間ですね。

ーーー 今後の動物医療に対してどのように力を入れていきたいと思っていますか?

今やっていることの延長線上で、呼吸器のことをもっと勉強しながらやっていきたいと思っています。それこそ産科もせっかく専門的な知識を持って病院のメインとしてやれていますし、もっと専門領域を増やしてレベルアップをしていきたいですね。

また、私たちは獣医療のパフォーマンスが良いというのは当たり前だと思うのですが、それと同時に「人に伝える能力が高くあるべき」だと思うんです。私は獣医療の道のプロフェッショナルとして、動物を治療することに留まらず飼い主ともしっかり向き合って納得してもらえるまで症例や治療方針について説明することを意識しています。

ーーー これから来院される患者さんに一言お願いします。

「地元の病院でいたい」というのが当院の今のコンセプトです。お互いのことをよく知って末永く頼っていただきたいので、飼い主さんとはペットと関係のないことでもコミュニケーションを取るように、私もスタッフも心掛けています。

でも、常に患者さんに伝えていることは「病院は1つに限定する必要はない」ということです。病院は使い方が大切だと思うので、救急、産科、呼吸器科を得意とする当院以外にも気軽に利用してほしいとお伝えしています。

コロナ禍ということもあり現在は完全予約制です。来院の際にはまず電話にてご連絡くださいね。

宮直人先生も登録している「アニぴたる」って?

アニぴたるは、専門性の高い獣医師が多数登録されているオンライン相談サービスです。ペットについての困りごとを相談すれば、信頼できる獣医師から的確な回答を貰えます。また、獣医師検索の機能も提供しており、困りごとにあった獣医師を見つけて連絡をとったり来院したり出来ます。