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【獣医師執筆】第1回:初めてさんのペットの東洋医学|ペットへの東洋医学とは?

最近、友達のワンちゃんが東洋医学をやっている動物病院に通っていて、なんだか調子がいいって言っている。「一体東洋医学ってどういうものなんだろう?」興味はあるけど知識がなくて人に聞くこともできない…なんて思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この記事では東洋医学の基本や、東洋医学をやっている動物病院を受診する方法をお教えします。

東洋医学とは

東洋医学とは?

東洋医学とは、中国で発祥した医療術が韓国や日本に伝えられたものです。それぞれの国で韓医学、日本漢方など少し独自の変化をしていますが、概ね同じものと考えてよいでしょう。

東洋医学が西洋医学と大きく違うところは、その動物のもともと体質や精神状態、気候などを考慮し治療法が変わっていく、オーダーメイドな医療だということです。そのため「異病同治」といって、違う病気なのに治療は同じになることもあります。もちろんその逆に、同じ病気の2頭の治療が全く違うものになることもあります。このように、東洋医学ではその動物の本来持っている生命力や問題点などを重要視しているため、通り一遍の治療にはならないのです。

東洋医学の治療法ーー漢方薬、鍼治療、灸治療

東洋医学の治療法ーー漢方薬、鍼治療、灸治療

東洋医学にはいろいろな治療法があり、漢方薬、鍼治療、灸治療などがあります。

・漢方薬

漢方薬は薬効成分の入っている植物や鉱物などから抽出した薬です。人間では抽出前の植物の状態(生薬)で処方されることもあるかもしれませんが、動物の場合は飲ませるのが大変なので錠剤や粉末で処方されることが多いです。ハムスターなどの小動物の場合、これを少量の液体に溶かしシロップ状にして服用してもらいます。

また、本場中国では抽出した漢方薬を布に浸み込ませ湿布の様に病変部の近くに貼り、薬液を浸透させたりします。最近ではその応用で、ペットの体に塗るタイプの漢方薬も開発されています。これならば薬を飲むのが苦手なペットにも投与しやすいです。

・鍼治療

鍼治療は、「ツボ」(経穴)と呼ばれる部分に鍼を刺していく治療法です。体のほぼ全域にツボがあり、およそ360か所のツボをWHOが定めています。ツボの1つ1つに効能があり、そこを刺激することにより身体の不調を改善します。動物では椎間板ヘルニアのような麻痺を伴う症例に用いられることが多いです。鍼は人間と同じものを使用しますが、動物の大きさに合わせて牛や馬では太いもの、猫やウサギでは小児鍼、美容鍼といった細いタイプの鍼を使用します。また、効能を高めるために微弱の電気を流す電気鍼療法もよく行われます。

・灸治療

灸治療は、もぐさに火をつけてその熱によりツボを刺激する治療です。動物は毛がありますので毛に引火しないように湿らせたガーゼの上から行ったり、紙の台座が付いたものや電気灸といって火はついていなくても先の温まるものを使用したりします。

東洋医学の診察を受けるには

東洋医学の診療を受けるには

自分の動物に東洋医学の診察を受けさせたいけれど「普段行っている動物病院と同じ方法で行っていいのかな?」「なにか特別に用意するものはあるのかな?」などと不安に思って二の足を踏んでいる方もいらっしゃると思います。そんな方に、実際に東洋医学の診療はどのように行われるのかをお教えしたいと思います。

まず、東洋医学診療をしている獣医師にはいくつかのパターンがあります。大きく分けて2つのタイプに分かれます。1つ目は従来の西洋医学診療の中に東洋医学を取り入れているタイプです。こちらの病院はその動物の症状を見ながら最善の治療法を決めていきますので、東洋医学と西洋医学のお薬を合わせて処方されることもあります。また予防注射などもできますので、普通の動物病院と同じように通院できます。2つ目は東洋医学に特化した病院です。東洋医学的治療のみを行うので、予防薬をもらったり手術をしたりということはできない場合が多いですが、専門性が高いのでじっくりと東洋医学の診察を受けることができます。

どちらのタイプの病院でも、東洋医学の診察を受ける場合には予約制になっているところが多いので、まずは電話してから受診してください。受診する際には特別な持ち物などは必要ありません。鍼治療の時などに下に敷くタオルなどが必要であれば病院で用意してくれます。いつもの動物病院に行くのと同じ様子で行きましょう。その動物のありのままを見たいので、特にきれいにしていく必要はありません。

東洋医学の動物病院を受診する際の注意

東洋医学の動物病院を受診する際の注意

注意して頂きたいのは「時間には余裕を持って来院して欲しい」ということです。東洋医学の診察は、体質、生まれ、環境など細かく聞いていきます。また四診といって、舌の様子をみたり、脈の強さをみたりといった東洋医学独特の診断法があります。チェック項目がとても多いので初診時は時間がかかると思った方がよいでしょう。

その後、治療したりお薬が処方されたりします。そこで、治療費についても注意が必要です。現在はペットの保険に加入されている方が多いですが、東洋医学治療は保険適用とそうでないものがあります。また保険会社によっても適用範囲が異なりますので、事前に調べてから受診するとよいでしょう。

せっかく漢方薬を処方されたけどうまく飲ませられなかった、どうしよう、次の診察の時に先生に怒られちゃうかな、などと思って嘘をついてしまう人もいるかもしれませんが、飲めなかったことや飲ませたけど吐いてしまった場合、好ましくない反応が出たときも次の診察の時に獣医師に隠さず話してください。その様子も東洋医学的診察の参考となり、次の診察へとつながりますし、また新たな投薬方法を獣医師が提案してくれると思います。

私見ではありますが、東洋医学の診察を行っている獣医師は、自らも長期の体調不良などで漢方や鍼灸の治療を受けた経験を持つ人が多く、病気の苦しみを知っている人が多いです。その分、患者の立場に立って優しく接してくれる人が多いように思います。怖がらずに受診してみてください。

<校正・編集> アニてぃくる編集部・セシル