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【獣医師執筆】第1回:再生医療とは?|教えて!ペットの再生医療

≪第1回:そもそも再生医療ってどういうもの?≫

【登場人物?!のご紹介】

うぃっぴー(犬):2歳になるウィペットの女の子で、とにかくお散歩が大好き。ただ、原っぱや砂利を飛ぶように走るので、怪我が絶えない。

ちゅら(猫):沖縄で保護されたことから、美ら海にちなんで、ちゅらと名づけられた3歳の女の子。うぃっぴーのお姉さん役。

左:うぃっぴー 右:ちゅら
左:うぃっぴー 右:ちゅら

とーさん(人):開業30年目を迎える獣医師で、日本獣医再生医療学会の副理事長(2021年6月現在)。うぃっぴーとちゅらのお世話係とも呼ばれている…。

とーさん、こと平野由夫先生
とーさん、こと平野由夫先生

ちゅら「とーさん!うぃっぴーがまた怪我してる!」

うぃっぴー「大きい声で言わないで!ちゅら!こんなの舐めておけば治るし、とーさんに見つかるといろいろ厄介なことになるから…(汗)」

とーさん「もう充分に聞こえてるし、厄介なことってなにょ。っていうか、血も出てるし、ずいぶん腫れて、傷口が開いてるじゃん。とにかく舐め舐めしないで、ちゃんと洗浄して、汚れやバイ菌を洗い落としておくべきだよ」

うぃっぴー「ほらぁ、もぉーっ(汗)。ねぇ、とーさん、きっと大丈夫だょ。なんかちょいちょいって塗ると、傷口がさーっと治っちゃうお薬とかないの?!(泣)」

とーさん「そんなに簡単にはいかないさ。とかげの尻尾じゃないんだから(笑)。でも、確かにそういうお薬があれば、どんな怪我でも、どんな病気でも、必ず治してあげられるようになるね。とにかく、うぃっぴーの傷口は洗うべきだよ!さぁ、こっちへおいで!」

うぃっぴー「わーーん(泣)」


皆さん、こんにちは。とーさんこと、ひらの動物病院の平野由夫です。うぃっぴーの傷は思いのほか深かったことから彼女の「きっと大丈夫」という希望は叶わず、その後、麻酔をかけて縫合することになりました。

動物病院では今回のような皮膚の傷や炎症に限らず、胸やお腹といった身体のなかの病気についても、症状に応じてそれらを改善する効果・効能をもつ薬を用いた投薬治療で、動物たちの苦痛をやわらげ改善に導いています。また、場合によっては洗浄や消毒だけではなく切除や縫合といった外科治療も併せて病気の原因を取り除き、一日でも早く動物たちが健やかな日常に戻れるように、日々、獣医さんたちは診療を続けています。

そういった日常診療に加えて、もし「病気になった部分そのものを、元々あった正常な状態に戻す医療」があったらどうでしょう?!うぃっぴーが切望していたような「ちょいって塗ると、傷口がさーっと治っちゃうお薬」があれば、どれほど多くの傷を、根本から、そして完全に治してあげることが出来るでしょう。病気という障害を受けた組織や細胞そのものに働きかけて、障害の進行を抑制し、正常な状態に戻ることを促す医療があれば、どれほどに多くの病気を「根治」そして「完治」に導くことが出来るでしょう。それこそが、まさに「再生医療」なのです。

注射器と薬

確かに現段階では「とかげの尻尾」が生え変わるような、完全な再生は可能ではありません。しかし、多くの大学や研究機関・関連企業で、再生医療の研究や開発は盛んに行われています。また、一部の動物病院では、臨床研究という位置づけで、標準的な治療法だけでは改善や維持が得られにくい難治性疾患腫瘍性疾患で悩む動物たちに対して、すでに獣医再生医療の提供を始めています。

どうですか?皆さん、再生医療が動物たちの治療のなかで、どういう役割を果たしているか、ご理解いただけましたか? 

次回はさらに理解を深めていただくために、そのメカニズムについて、≪第2回:再生医療って身体の中でなにが起きてるの?≫をお送りします。楽しみに待っていてくださいね!

さて、うぃっぴーの傷ですが、幸いなことに今回は再生医療の出番には至らず、抜糸も済みました!もう、すっかり元気に走り回っていますので、ご心配には及びません。

走るうぃっぴー

それでは、また一か月後にお会いしましょう!

<校正・編集> アニてぃくる編集部・セシル