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【獣医師取材】最期まで穏やかに暮らせる獣医療を届ける|高橋美樹先生

慢性疾患を抱えてしまっても痛みやストレスを緩和して治療をする

高橋 美樹みき動物病院 院長

<経歴>
  1992年           北里大学獣医学部獣医学科卒
  1992年4月 ~ 1992年9月   岩手県盛岡市の動物病院勤務
  1992年9月 ~ 1995年6月   東京都麻布十番動物病院NORIKO勤務(閉院済)
​  1994年 ~ 1996年        東京大学 大学病院 内科臨床病理研究室 研究生
  1996年 ~ 2002年     本間獣医科医院 春日部病院
  2002年 〜 現在      みき動物病院 開院
             

埼玉県越谷市で、みき動物病院の院長を務める高橋美樹獣医師。 中西結合医療を取り入れた治療を行っている高橋先生が、動物への向き合い方や病院の取り組みについてお話ししてくださいました。

「医療への興味」から芽生えた獣医師への道

ーーー 高橋先生は、なぜ獣医師を目指すことにしたのですか?

子どもの頃から動物が好きでした。

一方で、当時の私は病気がちで「どうして病気になるのか」「病気はどのように進行していくのか」と医療に対して興味を持っていました。そんな私が進路に悩んでいるとき、両親は獣医学部への進学を勧めてくれました。獣医学部への進学は、「動物が好き」と「医療への興味」という両方を満たしてくれる進路でした。
両親の勧めをきっかけに獣医学部を目指し、日々勉学に励みました。

その結果、無事獣医学部に進学することができました。

ーーー 大学入学後はどんな研究をしていましたか?

伝染病学の研究室に所属して、猫のコロナ(伝染性腹膜炎(FIP))などを研究していました。
細胞実験などを通じて、衛生観念について多くの知識を得ることができました。

今は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの人が感染予防の為に手洗い・うがい・マスク着用といった衛生観念を強く持っていますが、私が大学で研究をしてたときは、そのような強い衛生観念を持っている人は少なかったです。
それは、猫をはじめとするウイルスを持っている可能性のある動物に対しての衛生観念も同様でした。

私は大学で猫の伝染病について研究をしていたので、その時期から動物と接する際の衛生観念についても強く意識をしていましたね。

ーーー なるほど。就職先を決めるとき、研究者という選択肢はなかったのですか?

確かに大学では主に伝染病の研究をしていたものの、将来は小動物を診る臨床の場で仕事をしたいと当時から思っていました。

そのきっかけは、大学時代に警察犬訓練所で警察犬を訓練する現場を目にしたことでした。
警察犬に対するトレーニングやハンドリングなどを目にして、実際に動物に接することができる現場で獣医師として活躍したいという思いが強くなりました。トレーナーの方々が、犬の表情を観察しながら指示を出したりしつけをしたりする様子を間近で見ることができたのは、大変貴重な経験でしたね。

ーーー 研究という場から臨床の場に就職をしたときに、ギャップは感じませんでしたか?

臨床獣医師になって最初の頃は戸惑うことも多かったです(笑)。

大学時代は牛や馬などの大動物をはじめ、小動物についても勉強していましたが、臨床経験が浅く、当時勤めていた動物病院NORIKOの先生達は、未熟だった私を熱心に指導してくれました。
特に「動物を丁寧に扱うこと」「優しく接すること」という獣医師として忘れてはならない大切なことを教えてもらいました。

がん治療の知識を深めた研究医時代

ーーー その後は、どんなことを学びましたか?

大学病院で研究生として、ホルモン疾患やがんやリンパ腫などの特殊疾患を重点的に学びました。当時の内科の助教授は、リンパ腫に関して非常に造詣が深い方でした。特に、がん治療中に発生した緊急事態への対応方法や、抗がん剤を用いた治療法に関して多くの知識を得ることができました。

その後は、現場で外科を学ぶため本間獣医科医院に勤めました。
本間獣医科医院は、外科の経験豊富な先生が数多く在籍しており、手術器具も充実していて、恵まれた環境下で手術にたくさん立ち会ってスキルを高めることが出来ました。

中西結合医療という新たな治療法

ーーー 高橋先生が取り入れている中西結合医療とはどんなものですか?

中西結合医療とは、現代的な西洋医学と漢方薬・鍼灸・ホメオパシー治療などの東洋医学を、安全性・有効性を見極めた上で併用していく新たな医療概念です。
あまり聞き慣れないかもしれませんが、ホメオパシー治療とは体に備わる自己治癒能力に働きかける治療法のことです。

私はあらゆる動物に「最期まで穏やかに一生涯を全うして欲しい」と思っていて、その為には西洋医学の強い薬だけではなく、病気になる前の”未病”という状態から使える東洋医学の考え方はとても有効です。
中西結合医療に興味を持った約10年前から学び始めて、今もなお勉強中です。

ーーー ホメオパシー治療を取り入れてから印象に残ったエピソードはありますか?

ホメオパシー治療を始めて間もない頃、吐血・下血を繰り返すウェルシュ・コーギーを連れた飼い主さんが来院しました。まずは西洋医学的なアプローチと漢方を併用して処置しましたが期待した効果を示さず、習いたてだったもののホメオパシーを取り入れて治療をすることにしました。
まさに効果てきめんで、ただ症状が収まっただけではなく現在まで一度も吐血・下血が再発せずに元気に過ごせています。

症状だけでなく動物それぞれの体質に合わせて治療法を選択するホメオパシー的な考え方の必要性を強く実感した症例でしたね。

ーーー 獣医師としてこれまでで一番嬉しかった瞬間はどんなときですか?

呼吸困難に長い間苦しむ猫を救うことができた瞬間ですね。
この猫ちゃんは、鼻の中の腫瘍が呼吸を妨げていると他院で診断され、(腫瘍があるので)ステロイドなどの強い薬を処方されたものの、1ヶ月程度たっても息苦しい状態が続いてしまい、その病院では治療の継続を断られて、当院に運び込まれてきました。

その時は既に息も絶え絶えで、気管切開をして呼吸を確保する選択肢もありましたが、私は気管切開よりも負担が少なく傷跡も残らないホメオパシー治療を提案し、お家に酸素室を用意してもらい治療を続けました。
治療の甲斐あって順調に回復し、1ヶ月後には酸素室から出て普通の生活ができるようになりました。
その後、一度も呼吸困難を起こすことなく、穏やかに余生を過ごすことができ、本当に嬉しかったです。

「疾病を持っても苦しまず最期を向かえる」という治療の選択肢

ーーー 今後の獣医療の発展に何を寄与していきたいですか?

西洋医学と東洋医学・代替医療を組み合わせた統合医療という医療概念を浸透させていきたいです。
症状を抑える・改善させるということは獣医療として大切ですが、「疾病を持っても苦しまずに寿命まで生きる」ための治療の選択肢はたくさんあります。例えば、鍼灸・漢方・ホメオパシー治療です。

もちろん、治療の過程で手術が必要であれば仕方がありませんが、その後のケアに統合医療を取り入れることで、体の負担を減らすことはできます。あらゆる治療方針を多くの患者さんに知ってほしいです。

ーーー 高橋先生にとって“獣医師“とは?

私にとって獣医師とは、動物の気持ちを汲み取る存在です。
言葉を話すことのできない動物のSOSに気づくことが、獣医師の役目でもあります。

飼い主さんの許す限りの領域で、ペットの体に負担の少ない治療を大切にしています。

ーーー みき動物病院は統合医療以外にも特色がありますか?

当院では、爬虫類以外のエキゾチックアニマルの診療もしています。
ハムスターやうさぎの手術も可能ですよ。特に、ハムスターの避妊手術や蓄膿症手術の経験は豊富です。

また、再生医療の治療も行っています。再生医療とは、事故や病気によって失われた組織を再生する医療技術です。
必要に応じ治療法の選択肢のひとつとして提案しますよ。

慢性疾患・高齢になっても穏やかに人生を過ごせる獣医療を

ーーー 高橋先生、スタッフなどに周知し徹底している考え方や大切にしていることはありますか?

「動物の状況をよく理解して対応をすること」はスタッフ共に常に意識をしています。

例えば検査に対しても、疾病が顕在化している部分だけを検査するのではなく、動物全体として何が起こっているのかを知るために視野を広げて検査を行っています。入念な検査を通じて動物各々の個体差や体調を鑑みて、負担の少ない治療法を提案することを大切にしています。

しかし、動物にとって病院が怖い場所になるのはよくないですので、動物が安心して治療を受けられるよう、極力ストレスなく安心して検査や治療を受けられる空気感や対応を心がけています。

ーーー これから来院されるお客様にメッセージをどうぞ!

慢性疾患・高齢になってからの体調不良に対しても、治療法の選択肢はたくさんあります。
他の病院で治療が難しいと診断されたペットに対しても、漢方薬やホメオパシー治療を併用することで痛みやストレスを緩和することができます。
統合医療の観点から選択肢を提案し、大切な家族であるペットが穏やかな生活ができるよう獣医師として手助けをしますよ。なんでも相談してください。

高橋美樹先生も登録している「アニぴたる」って?

アニぴたるは、専門性の高い獣医師が多数登録されているオンライン相談サービスです。ペットについての困りごとを相談すれば、信頼できる獣医師から的確な回答を貰えます。また、獣医師検索の機能も提供しており、困りごとにあった獣医師を見つけて連絡をとったり来院したり出来ます。