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【獣医師取材】高齢社会で安心して動物と暮らす為に|塚越均先生

「動物と暮らすことで人は幸福を感じ、健康で長く生きられる」

塚越 均塚越動物病院 院長

<経歴>
 1984年      麻布大学 獣医学部卒業
 1984年~1986年 東京・世田谷の動物病院
 1986年~1989年 神奈川・横浜の動物病院
 1989年~    塚越動物病院 開院
 JTCVM 国際中獣医学院日本校 一期生・インストラクター講師

神奈川県横浜市戸塚区で塚越動物病院を経営する塚越均(ひとし)獣医師。東洋医学を学ばれた経緯や病院で行っている子犬を社会に慣れさせる取り組み、超高齢社会において獣医師として寄与する社会貢献についても語って頂きました。

5年間住み込みで動物病院に勤務し技術を習得、開院を決意

5年間住み込みで動物病院に勤務し技術を習得、開院を決意

ーーー 獣医師免許を取ってから今までの経歴を教えてください

大学を卒業し、獣医師免許を取得して最初の2年間は東京、3年間は横浜の動物病院で働いていました。勤務医だった5年間はほとんど住み込みで働いていて、夜中でも電話や急患に備えなければならず、白衣で働いてシャワーを浴び、また新しい白衣を着て寝るような生活。セミナーなどに出るときも友人に「塚越はなんでいつも白衣なんだよ」とツッコまれていましたね(笑)。

大学2年の時から実習生として動物病院に出入りしていたこともあり、早くから自分の病院を持ちたいという気持ちは強かったです。臨床の場で経験を積み、検査結果やデータの読み取り方だけでなく、実際に動物をよく見て触って診断する大切さ、飼い主さんとのコミュニケーションを学びました。その後塚越動物病院を開院したんです。

東洋医学の恩師と出会い、国際中獣医学院の一期生として入学

東洋医学の恩師と出会い、国際中獣医学院の一期生として入学

ーーー 塚越先生は動物への鍼治療にも力を入れていらっしゃると伺いました

はい。きっかけは最初に勤務した東京の動物病院で、椎間板ヘルニアの犬に鍼を打っている姿を見たことです。大学の獣医学部には東洋医学のカリキュラムというものは今でもありませんが、1980年代に既に鍼灸治療が臨床の場に取り入れられていることにはとても驚きました。
ただ、当時はまだ大学を出たばかりで一般的な臨床、ま西洋医学ですね、これを勉強することでいっぱいいっぱい。鍼灸治療を学ぶまでには至りませんでした。

その後2001年に獣医療における鍼灸治療のセミナーがあり、その講師が陳武(チンブ)先生(※1)と石野孝先生(※2)でした。そこで初めて石野先生に手ほどきを受け「これは鍼灸治療をやるしかない」と思いましたね。

※1 陳武先生・・・’21/7 現在、国際中獣医学院 日本校 理事長(中国本校学院長)。アジア伝統獣医学会(ASTVM)の事務局長も務め、中獣医学療法の普及に努められている。

※2 石野孝先生・・・’21/7 現在、国際中獣医学院日本校校長、かまくらげんき動物病院(神奈川県)院長。獣医療における東洋医学のレジェンド。

そこから5年程は毎年北京に赴き、陳武先生のもとで鍼灸や様々な中獣医学を学びました。2016年に国際中獣医学院日本校が開校されると聞いたときには一期生として入学、娘の菜々子も同校の三期生です。塚越動物病院では必要に応じて東洋医学を活用した治療を行っています。

子犬を社会に慣れさせる必要性

子犬を社会に慣れさせる必要性

―――塚越動物病院での独自の取り組みはありますか?

独自というほどのものではありませんが、うちは子犬のしつけ教室にも力を入れています。子犬の社会化をきちんとサポートしていく必要性をすごく感じているからです。
現在の流通サイクルでは、親や兄弟と共に過ごして知能や情緒を成長させるというプロセスを経ていない子犬もたくさん売られています。そういう子犬は他の犬と遊べなかったり、家族以外の人間を怖がったり、家の外が怖くて歩けなかったりして飼うのが難しい面があります。そんな子を社会になじめるようにすることはとても重要です。

社会化の要件としては、聞こえてくる生活音を怖がらないこと、飼い主の言うことをちゃんと聞けること、ひとりになっても寂しがりすぎないことなどがあります。人間と暮らしていく上で「最低限こうであって欲しい」というポイントを満たしていることですね。

動物も飼い主さんもストレスを抱えて生活していくのは良くないですし、もし災害があって避難所で生活することになった場合も動物が社会化出来ていないと困ったことになります。そうした問題を回避するためにも、力を入れて取り組んでいますね。

高齢者が安心して動物を飼える仕組みづくりを

高齢者が安心してペットを飼える仕組みづくりを

ーーー 今後、塚越先生が力を入れていきたい分野はありますか?

そうですね…獣医師としてどう社会に貢献するかというのは考えています。

今って超高齢社会ですよね。じゃあ高齢の方が動物を飼えるかというと、譲渡会でも60歳以上は譲渡される資格を与えられなかったりしてハードルが高い。

一方で、動物を飼うことで健康寿命が伸びるという科学的なデータも証明されています。つまり動物と暮らすことで人は幸福を感じ、健康で長く生きられるんです。
現に高齢者施設では動物と同居可のところも少しずつですが増えてきています。

でも、高齢の方は「これから動物を飼ったらこの子の面倒を最後までみてあげられないかもしれないから」と動物を飼うのを諦めることもあります。これは本当にもったいないことだと思います。もっともっと高齢者が自分の年齢を気にせず安心して動物を飼える世の中になって欲しいですし、そのためにどうすれば良いのかいろいろ考えていきたいですね。保護犬の譲渡システムの整備、ペット信託の整備など、これからの社会において高齢者が動物を飼うことをバックアップする仕組みづくりができたら、と考えています。

ーーー 塚越先生にとって“獣医師”とはどんな存在ですか?

動物のお医者さんとして、動物がいかに幸せに暮らせるか、それを迎える飼い主さんたちがどれだけ楽しく暮らせるかの両方をサポートする存在でありたいと思っています。

また、動物病院に来てくれる方だけではなく動物を飼っていない人に向けても情報発信していくべきだと思っていて。人間と 動物がより良く共生するにはどうしたら良いかということを、これからも考え抜いていきたいですね。

動物の可愛いポイントをいち早く見つけて、まずその子を好きになる

ーーー 塚越先生が 動物や飼い主さんと接する上で大切にしていることはありますか?

信頼関係を築くことですね。なので、病院にいらっしゃる飼い主さんとは雑談をたくさんします。お子さんの受験の相談をされることもありますよ。

また、緊張を与えないようにすること。治療時には動物の目線で話しかけることで安心させるよう心掛けています。それから動物の可愛いポイントをいち早く見つけて、まずその子を好きになることも大切にしていますね。

動物の変化を見逃さない、飼い主さんと獣医師が本音で話し合える関係を

ペットの変化を見逃さない、飼い主さんと獣医師が本音で話し合える関係を

ーーー これから来院されるお客様にメッセージをお願いします

動物病院は敷居が高い、ちょっとのことで連れて行ってはいけないんじゃないかと思う飼い主さんもいますが、僕としては近況報告をしたいというだけでもぜひ来て欲しいです。

なぜかというと、例えば下の子が生まれたとか、旦那さんが単身赴任から帰ってきたとか、近所で工事をしているとか、それって動物にとっては凄く大きな変化で、そこから調子を崩してしまう子もいるんですね。色々なことを念頭に置いて動物を診ていきたいので、本音で話し合える関係を作っていきたいと思っています。

塚越均先生も登録している「アニぴたる」って?

アニぴたるは、専門性の高い獣医師が多数登録されているオンライン相談サービスです。ペットについての困りごとを相談すれば、信頼できる獣医師から的確な回答を貰えます。また、獣医師検索の機能も提供しており、困りごとにあった獣医師を見つけて連絡をとったり来院したり出来ます。