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【獣医師取材】ホリスティック医療で自然治癒を目指す|青柳伸介先生

青柳 伸介ペットメディカル久が原クリニック 院長

<経歴>
  1991年3月 北海道大学獣医学部卒業
  1991年~1993年 葉山どうぶつ病院 勤務
  1993年~2003年 スカイ動物病院 院長
  2004年~現在 ペットメディカル久が原 院長
             

獣医師を目指したきっかけは交通事故との遭遇

ーーー青柳先生が、獣医師を目指したきっかけを教えてください。

実は、もともと弁護士を目指していたんです。

けれども高校生の時、通学中に車に轢かれて瀕死の犬に遭遇しまして…。当時の自分は、目の前で苦しんでいる犬をどうにか助けてあげたくても何もできず。ただただ、無力感を感じましたね。

この出来事をきっかけに、獣医師を目指すようになりました。

ーーー交通事故との遭遇をきっかけに、大きく方向転換して獣医師を目指されたんですね。

はい、高校卒業後は、獣医師を目指して北海道大学獣医学部に進学しました。

学部では牛の世話が当番として回ってくるのですが、牛ってめっちゃ可愛いんですよ。研究室は牛に関わる繁殖学教室で、クローンの研究をしていました。周囲の同級生の進路は研究職や製薬会社などバラバラでしたね。私自身も牛をはじめとした大動物に関わる進路に行こうか、犬猫などの小動物に関わる進路に行こうか、どちらにするかと悩んだのですが、動物病院のための臨床検査センターを作りたかったので、現場を見ておきたいという意味で関東の動物病院に就職。
しかし、私のイメージに近いものがすでにできていたのでセンターを作ろうという想いは断念しました。

しかし、臨床の獣医師として働く中で、犬や猫などの動物たちが元気になっていく姿を見られる動物病院での仕事にもっと力を入れたいと思うようになり、いまに至ります。

自然治癒で病気の根本的解決を目指す『ホリスティック医療』

ー現在はペットメディカル久が原の院長として、ホリスティック医療を行っておりますが、『ホリスティック医療』とはどのような治療法なのでしょうか?

ホリスティック医療という言葉が適切であるかどうかわかりませんが、あえてホリスティック医療とまとめさせていただくと、目に見える症状だけに焦点を当てるのではなく、病気を発症しているペットの体全体を診て、治療を行っていく医療です。そこには様々な治療法があり、「自然治癒力」を高めて、ペット自らの力で回復できるようにサポートをすることも含まれます。

ーーー西洋医学とホリスティック医療との違いを教えていただきたいです。

全ての症状に当てはまるわけではありませんが、通常の西洋医学は症状を消すための医療と言えます。人間で例えると、肩の痛みを和らげるために鎮痛剤を処方する、湿布を処方するなど、症状を和らげる医療です。

対してホリスティック医療は、痛みを起こしている原因を考え、その原因を取り除き、痛みが出ないようする医療と言えます。その中には中医学に基づく漢方薬治療や鍼灸治療、体内から毒素を出し治療に導くホモトキシコロジー、ホメオパシーなどさまざまなアプローチがあります。どちらが良いとか悪いとかではありません。動物にとって最終的に良いと思えることを行っていくべきではないかと思っています。そう考えると、西洋医学もホリスティック医療に含まれますね。

病気というのはその根本原因をたどっていくと、食事や住環境に起因していることも多いので、それらの問題を解決していく事もとても大事なことになりますので、飼い主さんにも手伝っていただくことはたくさんあります。それも含めてホリスティック医療といえます。

ーーー青柳先生がホリスティック医療を学び始めたきっかけは?

私自身、もともとは西洋医学だけで治療していました。けれども「飼い主さんはペットの病気を治したくて来院しているのに、根本的に治せないのはどうなのだろう…」と思ったんです。

仮にペットが下痢になったら、多くの病院では下痢止めを処方すると思います。でも、下痢って生体が治癒するための反応なんですね。それをただ単純に止めてしまってもいいものだろうかと考えたんです。治癒の過程を止められたら、治りきっていないので、再発するか、他の疾患として発現するか、将来もっと重い病気になるか。いずれにしても治していないんです。

そこで本当の意味での「治す」ことは、根本的原因を解決することだと思い、ホリスティック医療を学び始めました。
現在は診察の際に飼い主さんの要望やペットの容態に応じて、西洋医学もしくはホリスティック医療で治療をしています。まず、どちらの治療がいいのか悩む方も多いと思うので、わからない部分や不安な部分はお気軽に質問していただければ嬉しいです。

西洋医学では治らなかったペットが元気に

ーーー実際に西洋医学で治らなかった子が、ホリスティック医療で回復したケースはありますか?

もちろんです。

余命3ヶ月だった犬が、他院で肝臓が悪いと言われ、治療したけど悪化して治らず瀕死の状態で来院されたことがありました。

「レメディ」と呼ばれる治療薬を投与し、病気の根源を体から排出する治療法であるホメオパシー治療などを実施。1回の治療でかなり改善され、1カ月で完治しました。

その後も継続治療を行い、いまその犬は無事に18歳の誕生日を迎えました。

ーーー生死の境目にいた子が、18歳の誕生日を迎えられるまでに回復されたんですね!

西洋医学の場合、症状に対して該当する治療法を施して治らないとお手上げになりがちです。けれども、ホリスティック医療はより根本的な問題を解決できる可能性があるので、ここまで回復できたのだと思います。

加えて大切なのが、家庭環境です。いくらホリスティック医療で回復したとしても、衣食住が整っていなければ再発の原因になってしまうケースも。そのため、当院では手作り食による食生活の改善、住環境の改善のアドバイスをしています。

ーーー手作り食は栄養価が高くて健康に良いと聞きますが、実際にどうやって作ればいいかわからない飼い主さんも多いと思います。

手作り食の方が、ペットフードより質の良い栄養素を取れるのでおすすめですよ。

また実際に「どうやって作ればいいのかわからない」「栄養バランスが心配」というお声は多いです。そのため、当院では定期的に手作りごはん講座を実施しています。ホームページに日程を掲載しておりますので、ぜひ一度講座に来てみてください。

ペットを通して家族の健康を守る

ーーー 青柳先生にとって、獣医師とはどのような仕事でしょうか?

ペットを通して、動物と家族の健康を守るのが獣医師だと考えています。また私はこれまでの経験から、ペットの健康=飼い主の健康だと思っているんです。

そのため、飼い主自身が精神状態を良くしたり、食生活に気を遣ったりすることが、同じ屋根の下で暮らすペットを含めた家族共々、健康的に生活することに直結していると思っています。

ーーー 最後に、これから来院される方へメッセージをお願いします。

「他院で治療してもらったけれど、なかなか治らない…」「何か他にできることはないか…」と困っている方は、ぜひ当院での治療をご検討ください。

少し不安になることを言って申し訳ないのですが、西洋医学で末期な場合はホリスティック医療においても末期です。末期になってからの治療はとても大変なので、早めに来院してもらえればと思います。

またホリスティック医療という単語を聞くと「聞いたことない治療法だから不安」というお声を聞くこともあります。けれども、病院を転々として同じ治療法を繰り返して、完治しないケースもあるため、最悪の事態になる前に別の選択肢として選んでもらえれば嬉しいです。