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【獣医師取材】フェレットや犬猫を治療し、飼い主さんも癒す病院|北尾壮吉先生

動物、飼い主、病院のチームで治療に臨む

北尾壮吉きたお動物病院 院長

<経歴>
2004年 酪農学園大学獣医学科獣医学部卒業
2004年〜 尼崎市内の動物病院にて、勤務医、副院長、院長を経験
勤務医時代にネオベッツ夜間救急動物病院、ネオベッツ堺夜間救急動物病院
兵庫県獣医師会明石夜間救急動物病院での勤務も経験
2023年 きたお動物病院を開院

 

兵庫県西宮市にて「きたお動物病院」を開院された北尾壮吉医師。犬猫だけでなく、フェレット診療に力を入れる北尾先生に、「治療で大切にしていること」をお聞きしました。

物心ついたときから夢は「動物のお医者さん」

ーー北尾先生が獣医師を目指したきっかけを教えてください。

物心がついたときには「動物のお医者さんになる」と決めていました。明確なきっかけは覚えていませんが、動物が大好きで、たくさんの動物番組を見たり図鑑を読んだりする子でしたね。動物に一番詳しくなれる職業は獣医師だと思っていたので、迷いなく獣医学部に進学しました。

ーー大学では、どんな分野を中心に学んだのでしょうか?

大学では大動物の繁殖学を中心に学びました。獣医学は基本的に、どうやって動物の病気を治すか、つまりは「死に抗う」ことに矢印が向いているのですが、生殖学は唯一「命の誕生」に重きを置いている学問なので、特に魅力を感じましたね。

卒業論文を書くときは「馬の精子」について研究していました。競馬好きの方なら一度は聞いたことがあるような、有名な競走馬の精子を顕微鏡で覗く毎日でしたよ。

卒業後は地元に帰ることを条件に進学させてもらっていたので、兵庫県の動物病院に就職しました。

夜間救急に学会参加…学び続けた20年

ーーきたお動物病院を開院されるまで、20年間同じ病院で勤め上げたんですね。

基本的な臨床の現場はもちろん、夜間救急も経験しましたし、学会で発表もして、たくさん学んだ20年でした。

勤務医時代には、通常勤務後に2時間かけて夜間病院に向かい、夜中に働いて、仮眠をとってまた通常勤務…なんて毎日を送る時期もありましたよ。今でこそ働き方としては良くないですが、寝る暇もなく毎日ひたすら仕事をしていましたね。

ーー病院全体でいい医療を提供するために意識していたことはありますか?

院長として、他の獣医師には「その検査はなんのためにするか」を考えてほしいと伝えていました。例えば、経験が浅い獣医師が、なんとなくレントゲンを撮影して、軽く確認して終わってしまうことがありました。そこで、「君はそのレントゲンを1枚撮るのにどれくらいの費用を頂いているか分かっているか?」と。

検査にはお金もかかるし、せっかく撮影したレントゲン写真の見落としひとつで命に関わることもあります。撮るなら撮るで、すみずみまで確認する気持ちが必要です。それくらい、検査ひとつをとっても「何のための検査か」「飼い主さんや動物のためになるか」を考えるように徹底していました。

飼い主さんが納得できるように、治療方針を提案する

ーー「寄り添う」とのことですが、先生はどのように治療を進めていくのですか?

飼い主さんが納得したうえで治療方法を決定できるようにしています。病気の説明を丁寧に行い、検査や薬剤、手術などできるだけ多くの選択肢を提示して、同時にそれぞれのメリットやデメリットもお伝えします。

特に命に関わる治療のとき、僕はいつも飼い主さんに「後悔のない治療はありません」と伝えます。どれを選択しても絶対に飼い主さんは「もっとああしてあげれば良かった、こうしてあげていたら良かった」と自分を責めてしまうものなんです。だからこそ、したい治療は全て言ってほしいと思います。

ーー飼い主さんと一緒に治療方法を決定することを大切にしているんですね。

「先生ならどうしますか」とよく聞かれます。正直、すごく難しい質問です。僕は、治療方針の最終決定権は飼い主さんにあると思っています。意思決定に必要な情報は全てお伝えし、僕も飼い主さんも一緒に悩むことで、いい治療につながると思っています。

病院のホームページにも書いているのですが、当院の目標は「動物を治療することで、飼い主さんも癒す」ことです。できるだけ後悔が少ない治療を行い、また動物を飼いたいと思ってもらえるよう、看取る瞬間まで寄り添いたいと思っています。

ーー寄り添った治療ができたと感じるのはどんなときですか?

やはり治療を終えた後に、「ありがとうございました」と言っていただける瞬間です。お金をいただきながら感謝してもらえる仕事ってなかなかありませんよね。

印象に残っているのは、心臓病に罹ったヨーキーを治療したときです。高齢ということもあり、最終的には亡くなってしまうのですが、ご夫婦が涙ながらに「ありがとうございました」と言って握手してくださり、獣医師冥利に尽きると感じましたね。

フェレットにも専門的な診療が必要

ーーきたお動物病院ではフェレットの専門的な診療をしていますよね。

はい。偶然最初に勤めた病院でフェレットの診療をしていたことがきっかけです。これまで5万件以上のフェレット診察を行ってきたので、自然と詳しくなりましたね。多くのフェレットを診察するうちに、臭いで腎臓が悪いことに気づくこともありますよ。

ーー臭い…!やはり犬猫と同様に専門的に診れる獣医師が必要ですか?

そうですね。フェレットを専門的に診察できる獣医師は少ないので、正しい診察が難しい場合もあります。よくある症例でいうと、フェレットは「インスリノーマ」という低血糖を引き起こす病気で後ろ足の状態が悪くなることがあるのですが、フェレットに詳しくない獣医師は「ヘルニア」と診断してしまうことがあります。専門的なフェレット診察をできるのは当院の強みですね。

ーーきたお動物病院でも引き続きフェレットを診ようと思った理由はなんですか?

単純にフェレットが大好きだからです!

中には凶暴な子もいるので、診察中に手のひらの一部を噛みちぎられたこともありますよ。でも、それ以上に憎めない可愛さがある動物なんです。最初に勤めた病院でフェレットを診ていたとはいえ、今でも診続けているのは根幹の「好き」という気持ちが大きいですね。かわいいフェレット達の二次診療をしたくて開院したと言っても過言ではありません。

ーーズバリ、フェレットの魅力とは!

かわいいし、ふにゃふにゃと柔らかい触り心地ですし、イタズラ好きだけど憎めない。犬猫ほどではないですが表情も豊かで、ダンスもするんですよ。

それと、日本の高齢化社会に適した動物だと思うんですよね。高齢の方がお世話の面で犬猫を飼うのは難しいとき、フェレットが選択肢の1つに入ると嬉しいです。

飼育頭数はもちろんですが、フェレットを診察できる獣医師も増えてほしいですね。遠方から来てくれる飼い主さんもいるのですが、飼い主さんにも動物にも負担がかかってしまいます。フェレット診療ができる獣医師が増えればより飼いやすくなると思います。フェレットは、一度触れてみたら魅力にハマる人がたくさんいる動物だと思っていますから。そうして、これまで私が学会で発表したフェレットに関する知見が役に立つ機会があれば嬉しいです。

ーーこれから来院される飼い主さんに伝えたいことはありますか?

当院は地域犬猫の診療に加え、フェレットの二次診療に力を入れています。犬猫に関しては予防から比較的高度な治療はもちろん、各種専門獣医師とも連携を取れるようにしています。

また、二次診療というと深刻な状態のフェレットだけを診ると捉えられがちですが、爪切りからでも気軽に来院してほしいです。軽く触れたときに病気が発覚することもありますし、下手に構えなくて大丈夫です。爪切りがてら「うちの子かわいいでしょ!」と見せにきてくれるだけでもいいので(笑)とにかく気軽に来院してくださいね。

北尾壮吉先生も登録している「アニぴたる」って?

アニぴたるは、専門性の高い獣医師が多数登録されているオンライン相談サービスです。ペットについての困りごとを相談すれば、信頼できる獣医師から的確な回答を貰えます。また、獣医師検索の機能も提供しており、困りごとにあった獣医師を見つけて連絡をとったり来院したり出来ます。