【獣医師取材】動物と人が共に歩む暮らしの手伝いを | 杉下翔太先生
目次
獣医師だけではなく家族という立場からも寄り添った対応を
杉下 翔太 動物ノ病院かれん 院長
<経歴>
2012年 日本獣医生命科学大学獣医学科 卒業
2012年~2017年 桜花どうぶつ病院
2017年~2021年 鈴木犬猫病院(千葉県)
2021年3月 動物ノ病院かれん 開院
日本獣医がん学会獣医腫瘍科認定医Ⅱ種資格を持ち、東京都目黒区で「動物ノ病院かれん」の院長を務める杉下翔太獣医師。動物保護団体とも連携し、猫の保護活動も行っている杉下先生に、動物やその家族と向き合う際に大切にしていることなどをお聞きしました。
愛犬との出会いがきっかけで獣医師の道へ
ーーー 杉下先生が獣医師を目指したきっかけを教えてください。
小学2年生の頃に、実家でキャバリアを飼い始めたんです。
「この子に何かあったら助けてあげたいな」と幼心に思っていましたし、野球少年が野球選手を目指すような感覚で「犬が好きだから獣医師になろう」という感じでしたね。
「小動物の臨床に進む」という明確な目標はあったので、大学に入ってからは将来的に使えるように、基礎よりも臨床で使える方に進むことを決めて放射線学の研究室に入りました。
放射線学教室ではレントゲンを撮るトレーニング、大学病院での実習や診察の補助などをしていたんですが、今もレントゲンの画像を見て異常を見逃すことなくちょっとした違和感でもすぐに感じ取れるようになったのは、この頃のトレーニングのおかげだと感じていますね。
当時は「放射線学に進みたい」と強く思っていたわけではないですが、結果としてやっていてよかったなと思っています。
ーーー 獣医師免許を取得してからはどのようにスキルアップされたのですか?
獣医師になって初めて勤務したのは足立区にある「桜花どうぶつ病院」でした。
院長先生がとても素晴らしい方で、いわゆる「ホームドクター」である1次診療の動物病院ではあったものの、勉強熱心で2次診療レベルの知識も持っていたんです。
2次診療が必要な患者さんには「ここから先はちゃんとした専門病院を紹介しますよ」と、とても丁寧に案内されていましたね。
獣医療の面だけではなく患者さんとのコミュニケーションの取り方や誠実な対応の仕方など、桜花どうぶつ病院での経験は大きかったです。
さらなるスキルアップを目指し他の動物病院へ
ーーー その後は千葉県の「鈴木犬猫病院」に移られたのですね。
はい。桜花どうぶつ病院でも学ぶことは多かったですが、この頃からなんとなく開業も考えてはいたので「もう少し他の動物病院でも経験を積みたいな」と思っていたんですよね。
千葉県の「鈴木犬猫病院」は桜花どうぶつ病院と比べると規模が大きくて、多いときは10人くらいの獣医師が在籍していました。
1次診療と2次診療を掛け合わせた「1.5次診療」も行っていましたし、基本的に獣医師は担当制で「自分が診た患者さんは今後も続けて自分が診る」というスタンスだったのも魅力的でした。
ーーー 鈴木犬猫病院で鍛えられたスキルはありますか?
桜花どうぶつ病院では何をするにも院長先生に確認して決めていたんですが、鈴木犬猫病院ではそれぞれが自分の思うように診療を進めていく感じでした。
なので「診療の全てを自分で組み立てていく力」は鈴木犬猫病院で培うことができたと思っています。
例えば、同じ病気に対しても獣医師によって違う薬を使うこともあるんですよね。
さまざまな治療の進め方がある中で、私も自分が良いと感じたものを取り入れて診察を行うようになりました。
愛犬と愛猫を自分のところで看取りたいと開業を決意
ーーー 先生は鈴木犬猫病院にいる頃から開業の準備をしていたのですか?
具体的なタイミングは考えていませんでしたが「年齢的にも次は開業かな」と漠然と思ってはいました。
そんな時に、愛犬・かれんが身体が徐々に不自由になってしまう病気を発症し介護が必要になったり、元々てんかんを患っていて毎日の投薬が必要だった愛猫・じゃずの歩行の際のふらつきが目立つようになったりしていたんです。
こういった経験を通して「先に旅立つ彼らとの大切な時間をどう過ごして、どう共に歩んでいくべきなのか」ということを強く意識するようになったんですよね。
そして徐々に「大切な家族であるこの2匹を自分の動物病院で看取りたい」という気持ちが強くなり、開業を決めました。
ーーー 「動物ノ病院かれん」という病院名は愛犬の名だったのですね。
はい。残念ながら開業の準備中にかれんは旅立ってしまったのですが、せめてもの気持ちから病院名にかれんの名をつけたんです。
じゃずもかれんが亡くなった2ヶ月後に完全な寝たきり状態になってしまったのですが、「なんとかじゃずには開業を見届けてほしい」と強く思っていました。
私の思いが通じたのかじゃずも本当に頑張ってくれて、2021年3月の開業を見届けてから同年の5月に天国へ旅立っていきました。
かれんとじゃずからは本当にたくさんのことを学びましたし、開業のきっかけをくれた存在でもあります。
なので、病院のロゴもこの2匹がモデルになっていて、院内にあるステンドグラスにはかれんとじゃずを加えた我が家の大切な家族である動物たちがみんな描かれているんですよ。
大切な家族である動物に常に優しくありたい
ーーー 杉下先生が獣医師としてこれまで嬉しかった出来事は?
鈴木犬猫病院にいた頃に獣医腫瘍科認定医Ⅱ種資格を取得したんですが、わざわざ遠方から「腫瘍の認定資格があるから」という理由で私の元に来てくださった患者さんがいたんです。
他の動物病院では「手術はできない」と言われていたそうなんですが、私の手術で無事に腫瘍がとれて、その後は元気に寿命まで全うしたと聞きました。
そうして私を頼ってくださったことはもちろん、「その子が寿命を全うできた」という事実が本当に嬉しかったですね。
ーーー 認定医資格を持っているからこそ治せる病気もあるのでしょうか?
治療の選択肢というのは変わらないので「資格を持っているから治せる」というようなことは正直ないとは思うんです。
ですが、やはり経験は豊富ですから「ここにこの薬を足してみよう」など、他の先生よりも腫瘍に対して臨機応援に対処することはできるかもしれません。
何より、認定資格があることでご家族には安心感を持っていただけるかと思っています。
ーーー 「動物ノ病院かれん」の独自の取り組みなどもありますか?
当院では動物保護団体との繋がりがあって、保護猫の里親募集を積極的に行っているんです。
保護団体さんでは手に余るほどの子たちを保護していますから、治療が必要な子に関してはうちで預かって、しっかり治療を行ってからインスタグラムで里親の募集をかけるようにしています。
今は猫がメインですが、今後は保護犬や野犬に関しても「人に慣れさせる」という大切な過程も含めて里親募集を行っていけたらと思っています。
ーーー これから来院される患者さんに一言お願いします。
先ほどお話した愛犬のかれん・愛猫のじゃずの介護で、毎日の投薬や自宅での強制給餌・寝たきりのケアなど「獣医師」だけではなく「動物の介護やターミナルケアを行う家族」としてもたくさんの経験をしてきました。
そのため、みなさんの心に寄り添ったアドバイスをし、さまざまな方法の提案もできるのではないかと思っています。
そういったことも含め、とにかく「動物に優しくありたい」というのが私のモットーでもあります。
得意分野である内科や腫瘍に関してはもちろん、どんなに些細なことでも気軽に相談してくださいね。
杉下翔太先生も登録している「アニぴたる」って?
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