【獣医師取材】大切な命のために正確な画像診断と治療を|竹下恭平先生
目次
「この病院に来ればなんとかしてくれる」という病院にしていきたい
竹下恭平多摩中央どうぶつ病院院長
<経歴>
2014年
日本獣医生命科学大学 獣医学部卒(獣医師免許取得)
2014年4月~2017年6月
石川犬猫病院(長野県松本市)勤務
2017年7月~2019年8月
日本動物高度医療センター川崎本院腫瘍科・放射線科(神奈川県川崎市)
2019年9月~2020年3月
夜間救急動物医療センター(神奈川県平塚市)
2020年4月~2020年11月
アニマルウェルネスセンター(東京都西東京市)
2021年2月
多摩中央どうぶつ病院を開業し院長に就任
東京昭島市に2021年春にオープンした「多摩中央どうぶつ病院」。病院名について竹下恭平先生に尋ねると、「まず、地名で認知してほしいと思いました。そして、将来的にはこの地域の中核病院になるように成長していきたいという願いも込めています」との返答。
東京都道29号線立川青梅線に面した開けた角地にあり、車での来院がとても便利です。
獣医師としての自分の将来像を捨てきれなかった
ーーー竹下先生が獣医師を目指されたきっかけから教えてください。
子供の頃に脱走癖のある猫を飼っていて、ある日、ケガをして帰ってきた時があったのですが、そのケガを数日見逃していました。「自分はどうしてケガに気がつかなかったのだろう」と思い、動物の体調の変化やケガに気がつけるようになりたい、動物のお医者さんになりたいと思い、中学生の頃に獣医師を夢見ました。
ーーーそれで獣医大学に入られたのですか。
動物と同時に、化学にも興味があって、化学を学べる国立大学に入学しました。大学を卒業する前に、大学院に進むか、獣医学部に入り直すかの両方を準備して、卒業と同時に、獣医学部に入学しました。
ーーー国立大学と獣医学部で合計10年間の学生生活だったんですね。
両親は「自分が好きな方に進みなさい」と言ってくれて、今でも頭が上がりません(笑)。獣医師になることは⼦供の頃からの夢であり、その夢を捨てきれず獣医学部へ進学しまし た。
獣医学部で臨床に興味を持ち、ステップアップしていきました
ーーー獣医学部を卒業されて、まず長野県松本市の動物病院で働かれます。
学生時代にいろんな動物病院を回ってみましたが、石川犬猫病院に行った時に、自分が一緒に働いているイメージが一番湧きました。院長やスタッフとも相性が良く、いろんな経験ができた3年3ヵ月でした。
ーーー次に、川崎市にある日本動物高度医療センターに移られます。
学生時代に「放射線治療」に興味を持っていて、放射線の取り扱いの資格(第1種放射線取扱主任者)を取得。他の獣医師にはない特徴になると思いました。それで、「がん」治療の最前線に携わりたくて、設備が整っている日本動物高度医療センターに移りました。
ーーー早い時期から放射線の知識があったのなら、必然的な進路ですね。
そうですね。人間の治療と遜色のない設備が整った病院で実際に放射線治療の補助を2年ほど行い、知識が深まっただけでなくたくさんの症例を経験してレベルアップできたと思います。
犬猫の寿命が伸びたことで、がんは思った以上に多い疾患
ーーーがん治療はそんなに多いのですか?
⽝猫の死因となる三⼤疾病の⼀つはがんです。特に⾎液のがんであるリンパ腫が多いですね。リンパ腫の治療では化学療法(抗がん剤治療)を第⼀選択とすることが多いです。
日本動物高度医療センターには、⾼度医療を受けるために全国からがんを含めた多種多様な疾患を抱えた⽝猫が来ます。そこで働いたことで、様々ながんを経験するだけでなく、がん以外の患者ともふれあう機会があり、⾃分の中に病気の鑑別のための引き出しが増えました。
ーーー先生は、高度医療センターを経て、夜間救急に移られます。
動物の命を救っていく上で夜間治療のスキルは欠かせません。夜間対応の経験を積みながら、飼い主さんとのコミュニケーション力が鍛えられ、インフォームド・コンセント(獣医師から飼い主へ十分な説明と情報を提供し、飼い主が納得・合意して治療を進めること)についても研鑽できました。
ーーー次に開業を決意されて、どんな動物病院を目指されましたか?
自分の中での理想は、最初に勤めた長野県の動物病院です。長野県内で設備が一番整っている病院で、高度医療センターでも最新設備を使ってきたので、設備にはこだわりました。
総合診療プラス専門診療で、病院内で全て解決したい
ーーー現在の多摩中央どうぶつ病院の体制を教えてください。
獣医師が私と石嶋先生の2名、愛玩動物看護師が2名、診療補助のスタッフが1名、パート2名の体制です。手術室も完備し、整形外科とアレルギー科は石嶋先生の担当です。
ーーーホームページを拝見すると、腫瘍・整形・画像診断・アレルギーなど細かく対応されていますね。
私の持論ですが、「エビデンス(客観的事実)に基づいた治療」を実現するために、画像診断は今の獣医療に不可⽋なものと考えています。現在、当院では画像診断としてレントゲン検査と超⾳波検査(エコー)に⼒を⼊れていますが、可能であれば今後はCT検査機器を導⼊したいと思っています。診断がつくまでの治療と並⾏しつつ適切に検査を⾏い、その結果を踏まえて常に最適な治療を⾏いたいですね。
ーーーそれが、多摩中央どうぶつ病院のセールスポイントですね。
はい、画像診断は設備や読影のスキルがとても大切で、技術がモノをいいます。長く患(わずら)う患者の中には正しく診断されていないから治らないケースがあり、当院では正しく診断して治してあげたい。検査の必要性や鑑別診断についても飼い主さんとコミュニケーションしています。もし治らない病気と診断がついたなら、⾷事療法やサプリメント、⽣活環境の⾒直 しなども含めた病気との付き合い⽅を飼い主さんと⼀緒に検討してきます。
ーーー診察で先生が大切にしている想いはありますか?
技術や知識で対応できる範囲はどんどん広げていきたいと思っていますが、診療の時に特に⼤事にしているのは、その動物の気持ちになって考えてあげたい、動物の気持ちを飼い主さんにつないであげたい、病気の動物を助けたいという想いです。正確な診断をベースに的確な治療を⾏っていきたいです。
ーーー「正確な診断」という言葉は、飼い主にとって非常に心強いです。
診断結果を説明して、飼い主さんと意見がすれ違ったときは、「自分だったらこうする」という私情ははさみません。「手術はしたくない」という飼い主さんに、治すための⼿段として⼿術しかないなら、⼿術をした場合としなかった場合の今後の予測を説明し、他の選択肢やオプションがあるなら、それぞれのメリットとリスクを説明して納得してもらいます。
慢性疾患のように付き合っていく病気は、短距離走ではなく長距離走です
ーーー飼い主の判断が難しい時もありますよね。
もちろん、飼い主さんができること、できないこと、時間的なこと、経済的なことなど、様々な要因がからみますが、治療⽅針を悩まれる飼い主さんには治療プラン毎に予測される結果を説明し、最終的にご⾃⾝が後悔しない選択をするよう話して、その上で獣医師としての最適解を提案します。
その時に、飼い主さんが「背伸び」をすると治療の継続が難しくなることがあるので、背伸びをした選択は取らないようにしてほしいと伝えます。特に、慢性疾患のような付き合っていく病気は、「短距離走ではなく長距離走」だと思ってくださいと言います。
もちろん、先に費用の説明を必ずします。飼い主さんの懸念があれば、その必要性もきっちり説明を行います。
ーーー今後の病院運営の目標や夢はありますか?
突然⽣じた病気や体調不良に対応するため診療時間を増やす、具体的には休診⽇を縮⼩し、夜間診療の受け⼊れを増加していきたいです。そのためにはもっとマンパワーをあげる必要があり、今後若い⼈材を育成していきたいとう思いはあります。
複数の獣医師と動物看護師からなる「チーム医療」がこの世界の基準となっており、 チーム医療を成り⽴たせるには⼈材が必要です。しかしながら、⼈材を整えていくと運営⾯でのコストダウンが難しくなるため、そこの判断はいつも難しいです。
部門に分かれて、専門の先生が最後まで診ることが大事ですが、総合診療ありきで専門診療をやりたいですね。「専⾨をやるためには総合が必要」です。正確な診断をもとに動物の状態を総合的に判断し、「ここに来ればなんとかしてくれる」という動物病院になることが⽬標です。
竹下恭平先生も登録している「アニぴたる」って?
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