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【獣医師取材】丁寧な歯科治療で動物の生活の質を改善 | 津田卓二先生

飼い主さんが納得する獣医療を提供したい

津田 卓二日野どうぶつ病院 院長

<経歴>
  1992年 日本大学 卒業 獣医師免許を取得
  1992年〜1994年 公務員獣医師として勤務
  1994年〜1997年 関動物病院 勤務
  1997年〜1999年 牛込犬猫病院 勤務
  1999年 岐阜県内の動物病院 勤務院長
  2000年 日野どうぶつ病院 開業
  2019年 歯科口腔外科専門資格 ISVPS (ESVPS) GPCert Small Animal Dentistry and Oral Surgery 取得
             

岐阜県岐阜市日野で「日野どうぶつ病院」の院長を務めている津田卓二獣医師。歯科を得意とし、他県からも歯科診療を目的に来院される患者さんも多い津田先生に、動物の歯のこと・飼い主との向き合い方について詳しくお聞きしました。

公衆衛生の現場から小動物臨床の獣医師に

ーーー 先生が獣医師を目指したきっかけを教えてください。

実家が和牛の生産農家で、幼い頃から日常的に牛と触れ合って育ち、「牛の病気を治したい」と思ったのが、自分が獣医師を目指したきっかけです。卒業を目前にして、親からは「岐阜に帰ってきて県職員として働いてもらいたい」と言われました。県職員になったものの、当時、食鳥検査の開始とともに、公衆衛生分野の獣医師が必要とされており、配属を期待していた大動物診療の分野ではなく、保健所に勤めることになりました。

ーーー 公衆衛生の仕事から動物病院に移ったのにはどのような経緯が?

公衆衛生の仕事は、残念ながらすぐに自分には合わないと感じました。技術吏員でしたが、事務仕事も多く、何より狂犬病予防法に則り動物を殺処分する仕事がとても苦痛でした。

そんな時、狂犬病予防業務で関動物病院の院長先生と知り合い、お世話になることにしました。大変忙しい病院で、一般臨床は院長の柴田先生にご指導いただきました。

経営者の視点から始めた「歯科」が得意分野に

ーーー 「日野どうぶつ病院」開院までの経緯を教えてください。

関動物病院に勤務して3年ほど経った頃、父が脳梗塞で倒れてしまい私が実家のことをやらなければならなくなりました。幸い父はすぐに回復しましたが、ある程度経験を積むことができたと思い、退職する決断をしました。

その後、いくつかの動物病院に勤務しましたが、義理の兄から、開業したいのなら土地を譲っても良いと提案され、ありがたくお話を受けることにしました。

ーーー 得意分野でもある歯科にはこの頃から力を入れていたのですか?

当初は歯科分野には積極的ではなく、整形外科の分野に興味がありました。しかし、ネコも室内飼育が増え、整形外科の主な事象である骨折は急速に症例数は減ってきていました。予防などは正直興味はなく、自分が得意とする分野を探していたところ、3歳の犬猫の8割以上が歯周病に罹患しているということを知りました。

今まで、歯石除去をして欲しいという飼い主さんからの依頼に応えるだけでしたが、犬猫で最も罹患率の高い歯周病の治療がしっかりできるようになれば良いのではと思いました。まずは、2005年からわずか2年間で、日本小動物歯科研究会のレベル1から4の認定を受けました。当時は、歯科レントゲンの多くは今のようにデジタルではなくフィルム式で、撮影することさえ手探りで大変でしたが、元々手先が器用でしたので、徐々に面白みを感じるようになりました。

その後、しばらく時間が空きますが、一つの仕上げとして2017-2018年にかけて、Improve International Small Animal Dentistry and Oral Surgery courseも受講し、2019年にISVPSのSmall Animal Dentistry and Oral Surgery の認定を得られました。その時に交流が始まった先生方とは、今でもやりとりがあり、とても良い関係が続いています。

ーーー 歯科は他の科目と比べると結果が見えやすいように感じるのですが、実際はいかがですか?

正直それはなんとも言いづらいです。今でこそ、ある程度予想はつくものの、歯・口腔内の治療をすることでこのような変化(改善)が見られますよとまで具体的に説明することは困難です。

しかし、きちんと診断・治療をすることで、口の機能が回復するだけでなく、QOL(= Quality Of Life:生活の質)の大幅な改善が見られるということが、自分の技術が向上するに従い手応えとして感じられるようになってきました。歯科治療をきっちりできることで、QOLの改善が見られることは、飼い主さんだけでなく、多くの獣医師も認知していないと思います。私も最初は知らなかったように・・・。

口のことで悩むペットや飼い主の力になりたい

ーーー 先生が獣医師としてこれまでにやりがいを感じた出来事を教えてください。

実はかなり頻繁にあるのですが・・・。手術直後に歯を失って悲しんでいた飼い主さんが、手術前と手術後で動物のQOLの大きな改善を目の当たりにして、歯を失ったことはどうでも良いと言わんばかりに「先生の手術を受けて良かった」「もっと早く受けるんだった」と異口同音に言われること。また、他県から遥々やってきて来院されるだけでなく、何度も通院してくださる方がいらっしゃるときも、本当にやりがいを感じます。

ーーー 歯科の治療に対して「他院とはここが違う」というポイントは何かありますか?

他院との違い・・・、まずは手術以前の歯科診療にたっぷりと時間をかけていることでしょうか。歯がなくなることへの不安、麻酔への不安、様々な心配に対して、私が知りうる限りのことを過去の症例の写真を見せたりしながら丁寧に、1時間(大抵は1時間以上)かけて歯科診療をします。終わる頃には飼い主さんは心から納得されていて、ほとんどの飼い主さんは手術を予約して帰られます。

手術では、丁寧を心がけ、できる限り写真を撮り、レントゲンを撮って堅実な治療を行っています。多くの歯科手術は3~4時間ほどかかるのですが、看護師もよく私をサポートしてくれています。飼い主さんには綺麗になった歯の写真と歯科レントゲンを見て頂き、術後の説明もきちんと行います。

ーーー その結果として、動物の「生活の質」の改善にも繋がっているんですね。

そうです。ある意味特別なことをしているのではなく、一つ一つのことをきちんと丁寧に行うことが、QOLの改善に繋がっています。ですので、「口は、動物や飼い主さんの生活に大きく影響している」と私は確信しています。

三者が納得のいく治療を提案したい

ーーー 先生にとって「獣医師の役目」とは?

一般的には、動物の傷病を治療することが私たちの第1の役目ですよね。さらに私にとっての獣医師の役目は何か、特に歯科に深く関わっている獣医師という立場で言わせていただくとしたら、犬や猫は、口に問題を抱えているときどうなのかということを飼い主さんにできるだけわかりやすく説明すること、でしょうか。

飼い主さんによっては、「(破折して)神経が見えていても、キャンキャン鳴かないので、痛くないですよね?」とか言われますが、いやいや夜も寝られないくらい痛いんですよ、とか。正確な知識をもとに、飼い主さんにお伝えしなければいけないと思っています。

ーーー これから来院される患者さんに一言お願いします。

私は飼い主さんに「こうしなさい」と一方的に治療方針を提示するのではなく、基本的に飼い主さんの意向を尊重したいと思っています。しかし、全ての傷病が治癒するわけではないので、治る可能性が低いものははっきりとお伝えしています。また、先ほどもお話ししましたが、動物が口に痛みや違和感を感じていても、基本的にはひたすら我慢します。非常に些細な行動の変化が口から来ていることがよくあります。

ですので、例えば猫の尾側口内炎のように、ぎゃーっと叫んで、口の周りを手で引っ掻くような行動をしているとしたら、それはもう激痛だということです。多くの歯科・口腔外科症例は、かなり進行した状態で来院されていますので、気づいた時にはできるだけ早く動物病院を受診されるのをお勧めします。その際、少なくとも歯科レントゲンを持っている動物病院の受診を強くお勧めします。動物でも人でも、お口の問題を診断するためには、歯科レントゲン検査が大変有用だからです。

津田卓二先生も登録している「アニぴたる」って?

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