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【獣医師取材】ペットだけでなく飼い主さんの支えに|梅原孝三先生

西洋医学と東洋医学を合わせた診療を

梅原 孝三仙台プラム・アニマルクリニック 院長

<経歴>
  1989年      北里大獣医畜産学部畜産学科 卒業
  1998年      麻布大学獣医学部獣医学科 卒業
  1998年~2001年 東京都あきる野市、埼玉県などの動物病院に勤務
​  2001年      宮城県富谷市に富谷動物病院を開院 
  2011年~現在   宮城県仙台市に移転、仙台プラム・アニマルクリニックに改名            現在に至る
           国際中獣医学院日本校校長、ペット薬膳国際協会常任理事長 
                

宮城県仙台市で「仙台プラム・アニマルクリニック」の院長を務める梅原孝三獣医師。中獣医学(東洋医学)を併用した丁寧な診察を心がける梅原先生に、動物への向き合い方や動物病院の取り組みについて伺いました。

獣医師を目指したきっかけは「愛犬の病死」

ーーー 先生が獣医師を目指したきっかけを教えてください。

小学校2、3年生のときに飼っていた柴犬の雑種を、病気で亡くした経験がきっかけですね。

父親が飼いたいと言い出してブリーダーのところで選んだ犬です。でも、飼い始めると一番夢中になったのは私でした。ところが4,5歳で病気になってしまいました。

当時は動物病院も少なく、治療にお金や時間をかけることも少なかったのです。どうすることも出来なくて辛かったですね。

ーーー獣医学科に入る前は、畜産学科でも学んでいたそうですね。

実は現役では獣医学科の受験に失敗して、北里大学獣医畜産学部畜産学科に入学したんです。

研究室では羊を育てるために必要な栄養学を学んだのですが、これは今の獣医師の仕事に活かされています。基礎から叩きこまれましたから、栄養学は今も得意ですね。

北里大学を卒業後、やはり獣医師になりたいと思って1年半予備校で勉強し、麻布大学獣医学部獣医学科に入学しました。

皮膚病に興味を持ったのは「子どものアレルギー」

ーーー麻布大学に入ってからはどのような勉強をしたのですか?

研究室は衛生学に入りました。衛生学を学びつつ、大学の附属動物病院の当時の院長、小方宗次(おがたむねつぐ)先生に皮膚病について教えてもらいました。

衛生学の押田敏雄(おしだとしお)教授は、小方先生の元での勉強も認めてくれました。当時の先生方とは、今も連絡を取り合っています。

ーーー皮膚病に興味を持った理由は何ですか?

私は学生結婚をしたため、在学中に息子が生まれていました。皮膚病の勉強をしたかったのは、その息子が食物アレルギーだったためです。皮膚病の授業もありましたから、「勉強しないと」と思いました。今、皮膚病は得意分野です。他の先生から紹介してもらえるくらいになりました。

ーーー卒業後はどのようにスキルアップされたのですか?

あきる野市の動物病院を紹介され、ここで診療の基礎を学びました。埼玉の動物病院の分院で院長をやらせていただいた経験もあります。ここで一般的な疾患と、診察の流れの勉強ができたので開業が早かったですね。難しい手術でも、とりあえず見て覚え、やってごらんというスタイルで手術を教えていただきました。

獣医療の「引き出しのひとつ」に東洋医学を

ーーー東洋医学を診察に取り入れていますが、なぜ東洋医学を学ぼうと思ったのですか?

麻布大学の1年生のときにさかのぼります。大学の図書館で専門誌を読んでいたら、動物に鍼治療を行う獣医師がいるという記事を見つけたんです。読んで驚きましたね。

その先生が麻布大学の先輩だとわかって「興味があるから勉強させてほしい」とすぐに電話をしたところ、快く受けていただきました。

その先生が石野孝(いしのたかし)先生です。石野先生は、当時中国から帰ってきて開業したばかりでした。そのため病院の人手が足らず、診察を手伝いながら勉強をさせていただきました。たくさんの経験をさせてもらいましたね。

当時、日本では東洋医学を勉強する場がほとんどなく「東洋医学研究会」がその頃発足しました。その発起人に小方先生や石野先生がいらっしゃいました。ほかにも著名な先生が携わり、私も発足当時からの研究会に加入させてもらいました。

あの電話一本で人生が変わりました。当時は、現在のように東洋医学で動物の治療ができる時代になると思わなかったので驚いています。

ーーー東洋医学は、西洋医学に比べていかがですか?

とにかく難しいです、西洋医学とは基礎からの考えが全然違いますから。私の場合は、周囲に実践している先生がいらっしゃるので続けられています。

麻布大学在学時に住んでいた埼玉の、近くの動物病院の先生が、東洋医学研究会の発起人でもあったのでその病院でも勉強させてもらいました。

当時は自分でも何をしていたんだろうと思うくらい、休む間も寝る間もなく働いていました。しかし、全く苦ではありませんでしたね。

ーーー今後の獣医療の東洋医学について、国際中獣医学院の校長としてどうお考えですか?

国際中獣医学院日本校の校長として、東洋医学、最近では中医学と呼ばれますが、この学問を動物の治療に活用する獣医師を増やすことをライフワークとして寄与していきたいですね。もちろん西洋医学を治療に利用していくことに変わりはありません。

しかし、そこまでまかないきれない症例も多くの獣医師が感じていることと思います。獣医療の限界を高めていくには、引き出しを増やすことが大事です。

その引き出しのひとつが「東洋医学、中医学」だと思っています。しかし、東洋医学を知っている、または実践して応用している先生はまだ少ないのです。ですので、みんなで手を取り合いながら手ごたえのある獣医療として結果を残していきたいと考えています。

ーーー先生は、調理師免許を持っているそうですね。

学生時代に授業料を稼ぐために飲食店で働いていたのですが、そこで免許を取らないかと声をかけられて。調理師免許を持っている動物病院の院長はほとんどいないでしょうね(笑)。

料理が好きですし、東洋医学の食事「薬膳」も作っています。18年前から飼っていた犬に健康でいて欲しくて、手作りご飯を食べさせていました。栄養学の知識もあったので、手作りにこだわったんです。当時は残飯のイメージがありましたので、手作りご飯を犬に食べさせることはほとんどありませんでした。私は、犬用に栄養バランスを整えた、味付けをする前の私のご飯から、犬用に取り分けていました。

ペットと人間が同じ食事の視点には昔から注目していますし、犬薬膳のレシピもたくさん持っています。犬や猫の食事に関する本の監修も多くしています。犬や猫の食事、特に薬膳の世界ではトップレベルの知識と経験を持っていると自負しているので、犬や猫の食事を学びたい人に私を目標にしてもらえるように頑張っていきます。

「先生に診てもらってよかった」の一言がうれしい

ーーー 一番うれしかった出来事はなんですか?

飼い主さんからの「先生に診てもらってよかった」という一言が一番うれしいですね。

以前、猫エイズウイルスに感染した猫ちゃんが2歳で亡くなってしまいました。飼い主の家族である小学生の女の子が「先生ありがとう。先生に一生懸命診てもらってうれしかった」と手紙を持ってきてくれたんです。

私の一番の目標はこの言葉を言ってもらうことで、モチベーションにもなりますね。

ーーー 梅原先生にとって獣医師とはどういう存在でしょうか?

もともと動物が好きで獣医師になりました。ではなぜ好きなのだろうと思うと「癒し」ですね。人の癒しを支えているのが動物です。だから獣医師は動物を支えているようで、実は人間を支えているのかなと思っています。

例えば小学生に飼われていたハムスターは、実はその子を支えていたんです。そうなると、私はハムスターの治療を通して、小学生を支えていたのではないかなと。だから飼い主さんの顔を見て判断するのが獣医師かなと思っています。

診察にも飼い主さんとの会話にも極力時間をかける

ーーー<仙台プラム・アニマルクリニック>の独自の取り組みはなんですか?

西洋医学の診療と東洋医学を併用している点ですね。これを「中西結合獣医療」と呼びます。それと栄養指導は東北では一番と言える自信があります。

県内はもちろん青森や岩手、東京の先生からアドバイスを求められることも多いですね。肉や野菜の種類や量など、その子の病気などを考えてアドバイスができます。食べ物で病気が治ることもあるんです。

療法食というよりスーパーで買える食材で組み合わせていますよ。食べると体力が付くから治る方向にいきますし、食べないと治るものも治らなくなってしまいます。

ーーー 先生・スタッフなどに周知し徹底しているカルチャーなどはありますか?

動物を診るのも、飼い主さんと話すのも極力時間を取っています。開業時からのコンセプトは「1人30分時間をかける」でした。うちの病院は、飼い主さんとよく話していますね。

ーーー これから来院されるお客様に一言お願いします。

気軽になんでもお話してください。「動物はものを言わない」と思われていますが、意外と言ってます。動物の言ってることをわかってるのが飼い主さんです。

飼い主さんが気付いたことを言ってもらえると「それが原因だよ」となる場合もあるんです。

病気と関係ないようなことがあったとしても、いろいろなことを考えながらお話してもらえるように準備してもらえると良いと思います。

梅原孝三先生も登録している「アニぴたる」って?

アニぴたるは、専門性の高い獣医師が多数登録されているオンライン相談サービスです。ペットについての困りごとを相談すれば、信頼できる獣医師から的確な回答を貰えます。また、獣医師検索の機能も提供しており、困りごとにあった獣医師を見つけて連絡をとったり来院したり出来ます。