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【獣医師取材】常にペットファーストの提案を|関根秀子先生

やっぱり第一はペット目線

やっぱり第一はペット目線

関根 秀子モナ動物病院 院長

<経歴>
  1992年 日本大学農獣医学部(現、生命資源科学部)獣医学科卒業
  1992~2007年 主に横浜市内の動物病院に勤務
  2008年 モナ動物病院開業
  2017年 国際中医師取得
  2019年 中獣医鍼灸師取得
             

神奈川県逗子市でモナ動物病院を経営する関根秀子獣医師。常にペットファーストを掲げる関根先生が、人間味溢れる経歴や病院でのユニークな取り組みなどをお話ししてくださいました。

親に止められても動物が飼いたくて仕方なかった幼少期

親に止められても動物が飼いたくて仕方なかった幼少期

ーーー まず、関根先生が獣医師を志した理由を教えてください

子供の頃は、母親が動物嫌いで動物は飼うなと言われていたんです。ただ、家の中にさえ入れなければ良かったので、外でも飼えるおたまじゃくしや魚などを250匹くらい飼っていました。子どもながらの反発ですね(笑)。でも、それくらい生き物が好きで自分で育てたいという気持ちが強かったです。

高校受験の時に日大藤沢高校の隣に日大の獣医学科があることを知って、獣医師を目指すようになりました。日大藤沢高校に入学してからもぶれることなく獣医師を目指し、無事獣医学科に入りました。

ーーー 凄い!順調とも言える道筋ですね。研究室では何を学ばれていましたか?

病理学です。当時の研究室の多くは自分達で育てた犬で色々と実験を行い、最終的には殺処分をするというのが多かったんです。でも、研究のためとはいえ自分で育てた動物を殺処分することは私には耐えられなくて。病理の研究室では他人が育てた動物を解剖する流れだったので、そんな消去法の理由で選びました。

研究室では皮膚病を研究していました。でも私の目指していたものは顕微鏡を覗き込み続ける生活とは違うと思い、就職の際は臨床の獣医師一本で考えました。

ーーー 凄く素直な理由が伝わってきますね。病理の研究室から臨床の動物病院の現場に進んで、困ることはありましたか?

もう、初めて知ることだらけですよ(笑)。「犬はこんなにいっぱいうんちをするんだ」というようなところから、驚くことばかりでしたね。

ーーー しかし、そこから多くの経験を積まれて、40歳の時に開業されたと

はい。元々開業意志はなかったのですが、勤務医をしていると院長先生の治療方針に左右されることもあって。せっかく東洋医学の勉強をしていても、自由に鍼を打ったり漢方を処方したりはできなかった。自分の年齢的にも、開業するなら40歳が最後のチャンスかなと。

女性スタッフが多いからこそ、話しやすい話題もある

女性スタッフが多いからこそ、話しやすい話題もある

ーーー 気になっていたのですが、モナ動物病院のスタッフはなぜ女性のみなのですか?

例えばですが「ペットのこととはいえ男性獣医師に生理や乳腺のことなどは聞きづらい」という飼い主さんもいらっしゃいます。そういったことは獣医師が女性だと話しやすいのかもしれない。逆に、前立腺などのオス特有の病気は男性の飼い主さんからすると女性の獣医師には相談しづらい人もいるかもしれませんね。でも、どんな場合でもご自分が話しやすい獣医師を選び、率直に状況を聞かせて欲しいと思っているので、そこは声を大にしてお伝えしたいです。

成犬式の様子

ーーー 他にも、病院ではユニークな取り組みをしていると伺いました。成犬式について教えてもらえますか?

はい。コロナ禍になる前は成犬式(せいけんしき)というものをやっていました。人間の成人式を真似て、その1/2の年齢である10歳の犬と飼い主さんをお招きしてお茶会をするんです。10歳を迎えて犬もシニアに入るので、飼育する上での心構えをお伝えする機会でもありました。他にも、犬に着物のコスプレを着せて写真撮ったり、手形をとったり、思い出としても物としても残るようにと実施していました。

また、病院の裏側ツアーや子どもの獣医師体験もやっていました。犬の手に包帯をまいたり、肉の塊を縫ってみたり。実際の手術と同じようにマスクと手袋をしたうえで作業をするので、みんな汗だくで苦戦していましたね。

ーーー 楽しそうですね。他に、災害時の対応改善にも力を入れていらっしゃると伺いました

はい。現状はペットを飼っている人は避難所を利用しづらく、実際にも利用しないことが多いと聞きます。私も東日本大震災の時、避難所には逃げられませんでした。

あの時はたくさんの避難所があったけれど、逗子近辺では逗子開成だけが唯一室内にペットを受け入れてくれていました。「神対応だよね」なんて飼い主さん達の間でも話題にもなって。「ペットのいる人の避難所はここ」とあらかじめ決めておけたら、より安心して避難できると思います。

「ペットに鍼を打っているなんて」と言われていた20年前

「ペットに鍼を打っているなんて」と言われていた20年前

ーーー 先ほど東洋医学のお話が出ましたが、学び始めたきっかけというのは?

最後に勤めていた病院の先生が東洋医学のセミナーを受講して、その資料を見せて貰ったのがきっかけです。自分も昔、西洋医学の薬があまり効かないときに漢方薬で体調がよくなったことがあったので元々興味はあって、それを動物にも投与できるんだと思って。

私が最初に東洋医学のセミナーを受けたのは2000年頃なので、東洋医学歴は20年以上になります。20年前は「ペットに鍼を打っているなんて」と獣医師の中でも変人扱いされていたんですよ。それが今では飼い主さんから東洋医学の先生を探してきてくれるくらいに浸透してきました。とはいえ、ここだけの話、SNSのDMとかで私に東洋医学のことをこっそり質問される獣医師さんもいらっしゃいます(笑)。でも、獣医療の中で今後東洋医学はますます広まっていくと思います。

ペットが理想的な死を迎えることができると、良かったなと思います

ペットが理想的な死を迎えることができると、良かったなと思います

ーーー そんな関根先生が、獣医師として嬉しかったと思う瞬間を教えてください

やっぱり病気が治った時。あとは長期治療をしていた子が、最後は亡くなってしまったけれど「この病院でみてもらえてよかった」「色んな病気になったけど最後は寿命だったよね」と言ってもらえた時ですね。理想的な死を迎えることができると、良かったなと思います。獣医師は病気を治すことも仕事だけれど、いつか必ず死んでしまう動物に安らかな寿命の死を迎えさせることも仕事であると思っているので。

ーーー 治療をする中で、飼い主さんとの間で大切にしている事はありますか?

そうですね…治療について飼い主さんに納得してもらうことはすごく大事だと思っています。家族でペットを飼っている方には、全員で相談して今後どういう治療をするのかを決めてもらうようにお伝えしています。たとえば、お母さんは治療をやりたくないけどお父さんはやりたいとなると、亡くなった時に「こんなに薬飲ませたくなかった」「かわいそうだった」などという話になりやすい。後悔はなるべくない方が良いですから。お一人で飼われている場合にも、治療内容にはしっかり納得してもらうようにしています。

心がけているのは、常に「ペットファースト」

心がけているのは、常に「ペットファースト」

ーーー 関根先生は凄くペットファーストな治療をされるとも聞いています。

そうですね。やっぱり第一はペット目線です。飼い主さんの都合も考えるけど、第一は動物。

たとえば、トリミングに毛玉だらけになっている犬を連れていらっしゃって、毛玉を解いてほしいと言われたとします。でもブラシで毛玉を全部とかすとペットには相当な痛みが発生するんです。その場合はとかすのではなく、一旦バリカンで刈ることをオススメします。飼い主さんのご要望とは正反対の処置にはなりますが「その方がペットに痛みもないし、ちゃんとブラッシングをすれば数か月後にはふわふわになりますよ」と伝えて。ペットが苦痛を感じることは、出来る限り避けるようにしています。

飼い主が正しい方向へ向くように働きかけられる獣医師が憧れ

ーーー 仮に、関根先生の目から見て飼い主さんがベストな獣医療ではない選択をされそうなときはどうしていますか?

うーん…あまりにも私の考えと違う方向に飼い主さんが進みそうなときは、少々強めに説得をすることもあります。手術した方が良くなる確率が圧倒的に高いのに、手術だけはしたくない、と主張される飼い主さんも一定数いらっしゃって。手術をしなくても飼い主は痛くもかゆくもないけど、ペットはずっと痛い思いをしてしまう。そういう状況は避けるように働きかけることも獣医師としてできることなので、出来る限り説得するようにますね。実際には飼い主さんと私との相性もあるので、場合によっては別の病院を勧めたり、大きな病院に行かれるよう促すこともあります。

説得力という意味でいうと、国際中獣医学院日本校の校長をされている梅原先生は人生経験も豊富でいつもお話に説得力があるなと感じています。梅原先生のようなコミュニケーションが出来ると、飼い主さんとの考えの齟齬が露呈することも少ないだろうと思って。梅原先生には結構憧れています(笑)。

「動物の事をなんでも相談できる」動物よろづや、です

「動物の事をなんでも相談できる」動物よろづや、です

ーーー そろそろインタビューも終わりなのですが、 関根先生にとって”獣医師”とはどんな存在でしょう?

「動物の事をなんでも相談できる人」でありたいと思います。

私のスタンスとしては、動物の健康と切り離したところの相談も受けるので、何でも話してもらえる立ち位置でいたい。とにかく敷居は低く。ペットを飼う上で、誰に悩みを相談したらいいのか分からない飼い主も多いと思います。そんな時は私のことは“よろづや”だと思って。なんでも受け入れてお答えする準備を整え、お待ちしています。