【獣医師監修】カブトムシとクワガタムシの上手な飼育方法と人気の種類 越冬方法も
子どもから大人までに人気のあるカブトムシやクワガタムシは、夏に昆虫採集で捕まえるだけでなくペットとして飼育している人も多いのではないでしょうか。カブトムシやクワガタムシの幼虫と成虫の飼育方法と人気の種類についてお話しします。カブトムシやクワガタムシは初心者でも飼育環境と温度、湿度に気をつければ飼いやすい昆虫です。
カブトムシとクワガタムシの違いと幼虫の見分け方
まず最初に、カブトムシとクワガタムシの違いについてみていきましょう。オス場合、成虫は「ツノ」と「アゴ」を見れば違いがすぐにわかります。では、メスや幼虫についてはどうでしょうか?
カブトムシ
カブトムシ(甲虫・兜虫/Allomyrina dichotoma)は、甲虫目 カブトムシ亜目 コガネムシ上科 カブトムシ亜科 カブトムシ族に分類される昆虫です。
カブトムシは、オスにツノがあるのが特徴で、他の個体を投げて飛ばす力があります。ツノは頭部の長い頭角と、胸部に短い胸角があります。メスにはツノはないため、成虫の場合オスメスはツノがあるかで見分けることができます。幼虫はメスの方がオスよりも頭や体が小さいこと、またメスのお尻の外側3筋目あたりにメス班と呼ばれる1対の卵巣の模様があるかどうか、あるいは、オスのお尻のお腹側にV字マーク(V)やマイナスマーク(−)があるかどうかによってオスメスの判別ができます。
クワガタムシ
クワガタムシ(鍬形虫/Lucanidae)は、甲虫目 カブトムシ亜目 コガネムシ上科 クワガタムシ科に分類される昆虫です。名前の由来は兜の鍬形という形に似ていることから鍬形虫と名付けられたといわれています。
クワガタムシは、オスメスともにカブトムシと比べると平たい体が特徴で、オスはハサミのような発達した大アゴを持ち、メスにも小さく目立たないアゴがあります。多くの種類では、顎の大きさでオスメスを見分けることが可能です。幼虫はメスの方がオスよりも頭が小さいこと、またメスのお尻の外側3筋目あたりにメス班と呼ばれる1対の卵巣の模様があるかどうかによってオスメスの判別ができます。
カブトムシとクワガタムシの幼虫の見分け方
カブトムシとクワガタムシを見分ける場合、成虫の場合はツノやアゴが特徴ですが、幼虫の場合は顔の色と肛門の形、体毛で判別ができます。カブトムシの幼虫は、顔が濃い茶色をしていて、クワガタムシの幼虫は少し明るいオレンジに近い色をしています。次に幼虫のお尻をみると、横に割れているのがカブトムシの幼虫で、縦に割れているのがクワガタムシの幼虫です。また、幼虫をよくみると毛深い方がカブトムシで薄い方がクワガタムシになります。
この他にも畑やプランターの地中でよくみるコガネムシやカナブン、ハナムグリの幼虫はカブトムシとクワガタムシの幼虫にそっくりであるため、間違われやすいです。
カブトムシとクワガタムシの飼育に必要なもの
ではここからは、カブトムシとクワガタムシを自宅で飼う場合に必要なアイテムについてみていきましょう。
飼育ケース
まず、カブトムシやクワガタムシの飼育に必要となるのがフタ付きの飼育ケースになります。ケースのサイズは1匹から複数と飼育する数によって大きくする必要がありますが、ホームセンターなどで売られている観察用の虫かごや飼育セットから、衣装ケースを代用している人もいます。密封されない空気穴の空いたものを選ぶようにしましょう。飼育ケースは、仕切りのあるタイプや昆虫のケガを防ぐためにもなるべく大きめのサイズ選ぶことをおすすめします。
土(昆虫用マット・腐葉土)
飼育ケースの下にはくぬぎやナラなどのおがくずを使った昆虫用のマットや腐葉土を敷いて、カブトムシやクワガタムシが過ごしている自然の環境を再現してあげましょう。飼育しているのが、成虫なのか幼虫なのか、成長状態に合わせて適切なマットを選ぶとよいです。
餌
カブトムシやクワガタムシに与える餌は、基本的に市販されている昆虫ゼリーがおすすめです。スイカなどを与えたいという方もいるかもしれませんが、水分量が多すぎることで下痢を起こしたり、排泄物によってケース内の衛生環境が悪くなるため、果物を与えるのであればバナナやリンゴなどが適しています。幼虫の場合は、昆虫ウォーター(栄養保水液)を、成虫は昆虫ゼリーをひっくり返してしまわないように、木をくりぬいた餌皿にゼリーをのせて与えるのもよいでしょう。
木(のぼり木・朽木)/枯れ葉
飼育ケース内にくぬぎなどののぼり木や枯れ葉をケースに入れることで隠れるスペースを作ってあげることができます。また、木を転倒防止材として入れることで、成虫が動き回ってひっくり返った際に、すぐに起き上がり体力を消費を最小限にすることが可能です。クワガタの繁殖をさせることを予定している場合は土の中に朽ち木を入れて、産卵できる環境を作りましょう。
防虫シート
昆虫たちの健康を守るためにケース内部にコバエなどを発生させないことも大切です。防虫シートをケースに設置することで乾燥対策にもなります。ただし、カブトムシやクワガタムシはツノやアゴで防虫シートを破ってしまうことがあるので注意が必要です。
霧吹き
カブトムシやクワガタムシは乾燥に弱いため、ケース内の湿度を適切に保つ必要があります。ケース内が乾いてきたら昆虫マットが軽く締める程度に霧吹きを使って水分を与えましょう。ただし、霧吹きのしすぎはカビ発生の原因となるので注意が必要です。
カブトムシ・クワガタムシの飼い方
カブトムシやクワガタムシの飼い方は基本的にはほぼ同じです。しかし、カブトムシの多くは成虫で越冬することはなく寿命を迎えますが、クワガタムシの中で成虫として越冬できる種類では3年以上生きる個体もいます。寿命の長さがカブトムシとクワガタムシの飼育方法の大きな違いです。ケースで飼育する場合、直射日光の当たらない風通しのよい場所にケースを置き、室内の温度は18〜28℃で昆虫マットが軽く湿る程度の湿度を保つことが大切です。繁殖や越冬をさせる場合は、越冬中の幼虫や成虫を触ったりせず、直射日光を避けてそっとしておくことが、上手に育てるポイントです。
幼虫の飼育方法
カブトムシは夏に交尾を行いメスが地中に産卵した卵が秋に幼虫になり、脱皮をしながら初令幼虫、二令幼虫、三令幼虫と成長し、翌年の初夏頃にサナギとなって羽化します。
クワガタムシは交尾後に多くの種類で朽ち木(産卵木)の中にメスが産卵を行います。その後、卵が幼虫となり、脱皮をしながら初令幼虫、二令幼虫、三令幼虫、サナギと成長しますが、中には1年で羽化する場合や2年かかって羽化する場合もあります。
どちらも卵からでなく幼虫を捕まえるかペットショップなどで購入して飼い始めることが可能です。幼虫の食事は昆虫マットや朽ち木、腐葉土であるため、ケースの中に幼虫用の昆虫マットを10〜15cm程深く敷いて飼育をします。越冬する前は約2〜3ヶ月に1度昆虫マットを交換し、昆虫ウォーターを与えたり、乾燥しないようにしっとりした土になるように霧吹きで湿度を保ちます。
サナギになった場合は3週間程度で羽化するため、土の中に空洞を作る蛹室を崩したり刺激を与えないようにそっとしておき、また水分を多く与えすぎないように気をつけましょう。
成虫の飼育方法
夏に昆虫採集で見つけたカブトムシやクワガタムシの成虫、あるいは羽化させた成虫をケースの中で飼育する場合、産卵をさせたいのであればペアでの飼育が必要ですが、繁殖をさせないのであればケンカやストレスを避けるために1匹ずつ飼育すると長生きしやすいといわれています。
成虫を飼育する場合、ケースの中に成虫用の昆虫マット(5〜10cm程度の深さ)、のぼり木、防虫シートを設置し、昆虫ゼリーの餌を与えます。ケース内は清潔にして汚れた部分の昆虫マットを取り除き、のぼり木は洗わずにそのまま利用します。昆虫マットの交換頻度は臭いや汚れ、コバエやダニなどの発生が気になってくるようであれば2週間に1回汚れた部分の交換を行いますが、それ以外は2〜3ヶ月程度での交換が目安です。
クワガタの成虫を越冬させる場合
カブトムシは幼虫として越冬しますが、クワガタムシは種類によって(コクワガタ・オオクワガタ・ヒラタクワガタなど)幼虫だけでなく成虫として越冬することが可能です。越冬させる場合は、昆虫マットを深く敷いて家の中で飼育します。
クワガタムシの成虫は寒くなってくると活発な動きを見せなくなり、昆虫マットの中に入れた朽ち木やのぼり木、落ち葉などの陰に身を潜めて冬眠に入ります。冬は餌も食べませんが、室内が暖かいと餌を食べるケースもあります。越冬中は乾燥対策で昆虫マットに霧吹きをかけて湿度の管理を行います。注意点としては、越冬中のクワガタムシを気になって触ってしまったり、動かそうとするなど体にダメージを与えないことが大切です。
子ども達に人気のカブトムシとクワガタムシの種類
ペットショップでは外国産の種類も販売されていますが、初心者の飼育では国産のカブトムシやクワガタムシの方が飼いやすいといわれています。今回は、図鑑でよく見かける子ども達に人気の種類をピックアップしました。
ヤマトカブトムシ(国産カブトムシ)
ヤマトカブトは日本国内(本土)で夏によくみるカブトムシで、昆虫の王様とも呼ばれます。大きさはオス30mm〜54mm(ツノを除く)、メス30mm〜52mm程度の体長で、オスメスともに黒褐色で丸みを持った体が特徴です。
ヘラクレスオオカブトムシ
ヘラクレスオオカブトは亜熱帯地方に生息している世界最大のカブトムシで、ギリシャ神話のヘラクレスが名前の由来といわれています。大きさはオス140mm〜180mm、メス67mm〜80mm程度の体長で、黄褐色と真っ直ぐい長いオスのツノが特徴です。
ニジイロクワガタ
ニジイロクワガタはオーストラリア原産で、名前の通り七色に光り輝く体を持った世界一美しいクワガタとして人気があります。大きさはオス33mm〜70mm、メス25mm〜48mm程度の体長で、上に反り返り二股に分かれたアゴ先も特徴です。
オオクワガタ
オオクワガタは日本に生息している最も大きなクワガタの種類で、オス30mm〜75mm、メス30mm〜45mm程度の体長です。大きくて平たい体を持ち越冬をする特徴があります。
ノコギリクワガタ
ノコギリクワガタは日本で見かけることの多いクワガタの種類で、オス30mm〜70mm、メス25mm〜40mm程度の体長で、ノコギリのようにギザギザした歯のような立体的な大顎とやや赤みのある茶色の体が特徴です。また、自然の環境ではノコギリクワガタは越冬しない種類です。
コクワガタ
コクワガタは、日本で最もよく見かける種類で、オス20mm〜54mm、メス18mm〜32mmy程度と名前の通り小型のクワガタです。コクワガタは越冬するクワガタで、初めて昆虫を飼育する初心者でも飼いやすい種類です。
昆虫をペットに迎えよう!
夏に昆虫採集で捕まえたカブトムシやクワガタを一時的に虫かごで観察をするだけでなく、ペットとして飼育や繁殖をさせたり、日本国内には生息していない珍しい種類の個体を飼育している人もいます。飼育ケースの温度や湿度、餌の管理、お手入れなどによって、飼っていた親虫の卵から幼虫、サナギ、成虫へと成長する様子を観察しながら楽しむことができるところも、カブトムシやクワガタ飼育の醍醐味といえるでしょう。
ただし、外国産の昆虫を飼育している場合は、放虫することや不注意で逃げ出すことがないようにしなければなりません。環境省によれば本来日本に生息しているはずのない外来種のクワガタムシが野外で発見されたり在来種と交雑する事例も出ています。本来あるべき昆虫の生態系を守るためにも、高い意識と責任を持って飼育を行うことが大切です。お子さんと一緒に飼育する際は、是非このことを伝えてあげてくださいね。